アラーの国のフットボール

W杯予選に集中できない?サウジアラビアの苦悩


海島健さん

海島健さん (2)

2009/05/27 20:44

 W杯アジア最終予選、混戦B組で2連勝とやっと波に乗ってきたサウジアラビア代表だが、残る2試合がアウェーの韓国戦とホームでの北朝鮮戦という厳しい戦いが待っている。国民の期待は当然グループ2位以内に入ってW杯出場決めることだ。

 国内リーグはアル・イテハドが最終戦でアル・ヒラルとの直接対決を制して優勝を決め、4月12日に終了。サウジ国王杯も5月15日に決勝戦が行われ、アル・シャバブがアル・イテハドを4-0で圧倒し、アル・イテハドの2冠を阻止した。国内リーグも無事終了して国を挙げてのバックアップ態勢がとられて…と言いたいところだが、なかなかそうはいかないのが中東のサッカー大国の現実だ。本来ならばちょっとしたお休みが与えられて余裕で代表合宿をスタートさせているはずなのだが、代表戦士がきちんと集まれるのが5月29日以降にずれこみそうだ。

 

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 まずは2つの親善試合を含めたサウジアラビア代表の今後のスケジュールを確認してみよう。

5月26日  カタール戦(ドーハ)
6月4日   中国戦(天津)
6月10日  W杯予選・韓国戦(ソウル)
6月17日  W杯予選・北朝鮮戦(リヤド)

 代表招集がスムーズにいかない理由は、アジアCLだ。日本勢も出場4チームが決勝トーナメントに進み決勝トーナメント1回戦(グループ首位のホームでの一発勝負)は6月24日に行われるが、W杯アジア最終予選の後になるので、まずはW杯予選に全力投球できる。しかし、アジアCL西ブロックでは決勝トーナメント1回戦が5月27日に組まれている。そのうち1試合は26日に行われ、アル・ヒラルはウンムサラル(カタール)にPK戦の末、敗れた。
 わざわざW杯予選の前に決勝トーナメントを組んだのは西ブロックに属する国のほとんどの国のリーグが4月から5月にかけて終わってしまい、シーズンオフに入るという事情からだろう。アジアCLのためだけに所属選手を(この猛暑の季節)さらに1カ月拘束するのはかなりの無理がある。
 
 サウジアラビアは出場4クラブすべてが1次リーグを勝ち抜いたため、26日の親善試合のカタール戦はアジアCLのため代表戦士がごっそり抜けた事実上のB代表になってしまう。このあたりが強豪国のジレンマでもある。大事なW杯予選の韓国戦へ、A代表は4日の中国戦1試合で調整しないといけない。
 
 さて、アジアCLのトーナメント1回戦のほかにサウジアラビアマスコミが騒いでいる話題がある。アル・イテハド所属のFWナイフ・ハザジィの移籍騒動である。当コラムでも何回か取り上げたように代表での大活躍で一躍、時の人となったヤングストライカー。代表での活躍のおかげで所属クラブでもスタメンを奪い結果を出しているクラブの至宝。このナイフは現在、公式には軍に所属しておりアル・イテハドでの扱いも正式なプロ契約ではないとのこと。月給7000サウジリアル(18万2000円)と言われる。

 この「新国宝」をめぐる争奪戦はすでに水面下で始まっているようで、具体的な金額とともに報道されることが多くなった。リーグ2位に終わったライバルチームのアル・ヒラルもラブコールを送っている。アル・ワタン紙によると、アル・ナスル(サウジアラビア)が2500万サウジリアル(6億5000万円)で、アル・ジャジーラ(UAE)が1500万サウジリアル(3億9000万、プラス出来高オプション)での契約を持ちかけているというから、争奪戦のすさまじさがよくわかる。

 「(所属クラブの)アル・イテハドは家と車をあげる約束をしたのに、まだナイフはもらっていないようだ」といった、本当かどうか怪しい情報とともにかなり移籍騒動もあおられている感がなきにしもあらずで、W杯予選の話題は今のところそっちのけなのである。

 というわけで、代表選手の多くは5月27日まではアジアCLに集中し、ほとんど休む間もなくアウェーの中国代表戦。その後が大切なW杯最終予選2試合となる。アジアCLの試合を前に持ってきた影響が一番大きいサウジアラビア代表。せめてナイフ争奪戦はW杯予選の後にしてほしいものだが、獲得を狙うクラブにすれば、そんな悠長なことも言ってられないという事情はある。アラブ勢のW杯出場全滅を避けるためにも、湾岸の各クラブには自制をしてほしいというのが多くの国民の希望だろう。「身内を傷つけたナイフ」ではシャレにならない。 

※写真は05年クラブW杯でのアル・イテハドのFWロナルド・ゴメス

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