アラーの国のフットボール

サウジアラビア名門チーム「日本人買います」


海島健さん

海島健さん (2)

2009/07/31 15:52

 湾岸は今猛暑の季節。各国リーグはシーズンを終了、休養期間に入り、どのチームも来期に向けた補強を着々とすすめている。名古屋のダビがカタールのウム・サラールに移籍を決めたのもこの大きな流れの1つ。Jリーグ所属(か経験のある)の外国人ストライカーが中東、とりわけ湾岸に移籍という流れは今後も続きそうだ。それとは別に今年は興味深い新たな流れが加速している。湾岸クラブがアジア枠を使っての日本人選手の獲得に動いたことだ。今回は結局実現しなかったものの、それなりの金額を積んで日本代表クラスに働きかけた。
 
 地元紙で「ほぼ合意!!」とまで報じられた例がある。グルノーブル移籍となった松井大輔である。今年の6月中旬ごろサウジアラビア紙で報道され、直後に松井大輔ベストプレー集が移籍先と言われていたアル・ナスルのサイトに載せられ、あとは松井がサインをしてやってくるのを待つばかりの状況だった。
 
 その当時のサウジアラビアのアル・ワタン紙にはこんな記事が出ていた。「アル・ナスルクラブの副会長アーメル・アル・ザルハム氏がジュネーブで松井のエージェントと接触。2年契約の320万ユーロで合意に達した模様」。続けて「以前から松井にラブコールを送っていた同クラブ。松井側はサウジアラビアに行くことを当初は拒否していた(=その理由は不明)。クラブ側はその後もあきらめず、契約内容などをさらに松井サイドに有利にするなどの誠意が通じたのか、松井側が最終的には首を縦にふることになった」と合意に至るまでのいきさつを紹介。「アル・ナスルには現在2人のアルゼンチン人と1人のブラジル人が在籍しており、松井は最後の枠で加入する外国人選手」といったチーム事情にも触れている。

 

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 サウジアラビアは、日本同様に、アジアCLに出場したすべての4クラブが決勝トーナメントに進んだ。その4クラブにサウジリーグ2強のアル・ヒラルとアル・イテハドはもちろん含まれ、それにアル・シャバブとアル・イティファク。アル・ナスルは現在これらのクラブの次くらいに位置する実力と見ていいだろう。たとえば08-09年度は、サウジリーグ5位、国王杯8強どまり、クラウンプリンス杯4強。とはいえ、80年代初頭から90年代にかけてはアル・ヒラルとアル・ナスルの2強時代だったこともある、リーグ優勝6回を誇るサウジアラビアの名門チームの1つである。
 
 94-95年シーズン以来、14年もリーグタイトルから遠ざかっており、今年の初めあたりからチームの方針を大転換し、大きな出費覚悟で過去の栄光を取り戻すべくなりふりかまわぬ補強に乗り出した。年初のガルフ杯ではオマーンが優勝したが、その立役者である得点王の超新星オマーン人FWハッサン・ラビアの争奪戦に勝利した(=半年のレンタル)。さらに、当コラムで何度も取り上げている、サウジアラビア代表の新国宝ナイフ・ハザジィ(アル・イテハド)の争奪戦にも参戦し2500万サウジリアル(約6億5000万円)の破格値を提示し、所属クラブのアル・イテハドも真っ青になったのもつい最近のこと(おそらくナイフはアル・イテハド残留)。
 
 さらに6月になってものすごい国内移籍が成立した。FWモハメッド・アル・サフラウィのアル・カディーシャ(サウジアラビア2部、来季1部昇格)からアル・ナスルへの移籍だ。3200万サウジリアル(8億3000万円)がつぎ込まれ、ヤセル・アル・カフタニが05年にアル・ヒラルに移籍したときのサウジアラビア人としての記録2200万サウジリアルを大きく上回った。そして、スイスのヌーシャテルで活躍していたサウジアラビア代表のフセイン・アブドル・ガーニーも来シーズンはサウジアラビアに戻り、元所属していた(サウジアラビアの)アル・アハリではなくこのアル・ナスルと契約。
 
 日本では報道されたかどうか定かではないが、アル・ナスルは5月にセルティック所属の中村俊輔にも巨額オファーを出していたらしい。こちらの報道では、中村サイドは日本国外であればスペイン移籍を希望していたとのことで断念。そこで、急きょほかのアジア人を、特に日本人をということもあったようで、松井に白羽の矢がたてられた。中村獲得に用意しておいた巨額資金もあり、松井獲得の資金も十分すぎるほど用意できたのではないだろうか。
 結局、アジア枠では韓国代表のイ・チョンスを獲得。年棒10億ウオン以上の1年契約だという。ソル・ギヒョン(昨季アル・ヒラル)イ・ヨンピョ(今季アル・ヒラル)に続くサウジリーグで活躍する3人目の韓国人選手となる。個人的にはサウジアラビアを代表する強力なFWの下で、日本人MFが献身的なサポートをし、欧州リーグの経験のある屈強なCB2枚(=これは3人の外国人枠でとる)がいるクラブが誕生したらぜひもので見てみたいし、アジア枠を有効に活用してアジアCL優勝を目指すには理想的なチームになりそうな気がする。
 そういう意味でも来シーズンのアル・ナスルには筆者も注目している。
 
 アジア枠の選手も高いレベルの選手を獲得しないと国内リーグすら、生き残れないという必死さすら感じるこの松井獲得への熱意。湾岸の資金力のあるクラブではアジア枠の選手に対しても巨額オファーで魅力的な契約をもちかけてくる。そんな時代に入りつつあり、日本人のビッグネームが実際にやってくる日も近いのかもしれない。

※写真はグルノーブルに移籍した松井大輔(撮影・鹿野芳博)

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コメント (6)

プーアールさん

プーアールさん (0)

2009/08/02 17:27

お久しぶりです。
湾岸の日本人買いですか。^^;

Jリーグも観測気球として打ち上げられたJUMPの骨子がそのまま施行されれば、短期的に大量の選手リストラが出ることになります。
勿論、J2やJFL以外のアジア圏(韓国・香港・東南アジア)にも職を求める新しい流れができると想います。

ただ、湾岸が望むのは日本代表クラスでしょうから、それは実現しないかもしれませんね。

湾岸の2部リーグレベルって、やっぱり金持ちなんですか?
それとも、チーム数的にもあまり整備されていない状況なのでしょうか?

過去に少しばかりネームバリューのあったJ2レベルのベテラン選手などにとっては、湾岸の2部などは魅力的な出稼ぎ先になるかもしれませんが。

サイトヲさん

サイトヲさん (1)

2009/08/09 08:23

湾岸でも国によって事情は様々ですが、
サウジに関して言えば、リーグの組織は予想以上に整っている印象を滞在中受けました。
サウジリーグの場合、少なくとも1部~3部まで存在しています。
(1部12クラブ、2・3部各14クラブ。4部もあるらしい)

現在のトップクラブの序列で言うと、実力面では
リヤド本拠のアル=ヒラール、アル=シャバーブ、
ジェッダ本拠のアル=イティハードが3強。
それに続く第2グループがジェッダ本拠のアル=アハリ、ダンマン(東部にある第3の大都市)本拠のアル=イティファーク、
そしてリヤド本拠のアル=ナスルといった感じでしょうか。
各国代表級の外国人選手を買い集められる体力を持っているのは、
上記の3強+アル=ナスルの4クラブといった印象です。

一方、人気面でずば抜けているのはヒラールとナスルの2クラブ。
この2クラブのファンはリヤドにとどまらずサウジ全土に散らばっているそうです。
実際、私の知人のサウジ人学生(南部出身)も「好きなクラブはヒラール。そして地元のアル=ハズム」と公言して憚りませんでしたし、
ダンマンで北京五輪予選を観た時に知り合った地元出身の若者も、好きなクラブはヒラルかナスルだけで、地元のイティファークやカディシーヤなどには全く興味が無いようでした。

サイトヲさん

サイトヲさん (1)

2009/08/09 08:27

>プーアールさん
純粋な実力面で言えば、向こうでも通用するJリーガーは多いと思います。
実際、昨シーズンは元韓国代表のソル=ギヒョンがヒラールにアジア枠での短期レンタル移籍して、そこそこ活躍していましたし。
来年のW杯で日本が活躍して、「日本の選手」全体の市場価値が上がれば、湾岸諸国の目がひょっとしたら代表クラス以外の日本人選手にも向くようになるかもしれません。
サウジに関して言えば、外国籍選手の大半はJリーグ同様無名選手も含めたブラジル人主体で、それに次ぐのがアフリカ諸国からの選手。
チーム編成を無視したビッグネーム志向に走るクラブはほとんどなくなっています。
(数少ない例外が、俊輔や松井にオファーを出したナスルかもしれません)

もし日本人選手が湾岸諸国のクラブを目指すとしたら、なんといってもネックになるのは生活環境面でしょうね。
暑さと乾燥(海沿いの場合は逆に超多湿)の気候に加え、
サウジの場合でしたら、女性単独での外出は原則認められていないため、家族はほぼ100%コンパウンドでの「軟禁生活」を強いられるでしょうし、
サウジよりは規制のゆるいUAEやカタールは、旅行ならともかくも生活するにはまったく退屈な国ですので。

※写真は昨年4月に観に行った、サウジリーグのシャバーブvsアハリ戦(@キングファハドスタジアム)。
実力面ではサウジ3強に入るシャバーブですが、まっっっっったくといっていいほど人気はありません。。。
個人的には結構好きだったんですけどねえ…。

プーアールさん

プーアールさん (0)

2009/08/09 21:57

>サイトヲさん
貴重な情報ありがとうございました。
僕はマルコス・セナの従兄のアスンソンやチェコ協会会長兼代表監督で話題のハシェックがいたアル・アハリには興味を持っていたのですが、これはUAEですね。^^
エジプトやサウジなど、そちらではアル・アハリというクラブ名は多いですよね。

サウジリーグの場合、1部12チームという事はリーグ戦は土曜の夜が多いのですか?
それほど、過密日程ではないのでしょうね。

生活環境を考えると、妻子持ちのベテラン選手にとっては厳しそうですね。まさに、単身赴任の出稼ぎになりそうですね。

若手選手にとってもキャリアアップの経由地としては、まだ湾岸の選択肢は無いでしょうしね。

日本選手の価値向上と、Jリーグの生存競争の激化の2つの要素が重なれば・・・、みたいな感じでしょうか。

カウンターサッカーのイメージが強いサウジですが、リーグの強豪チームの中には伝統的なポゼッション志向のチームもありますか?
ブラジル人助っ人が多いのであれば、暑いとはいえ、そういうサッカーもあるんでしょうね。

色々と情報ありがとうございました。

海島健さん

海島健さん (2)

2009/08/13 21:30

フーアールさんへ

しばらく日本語ネット環境におらず、おそくなりました。


>過去に少しばかりネームバリューのあったJ2レベルのベテラン選手などにとっては、湾岸の2部などは魅力的な出稼ぎ先になるかもしれませんが。

このあたり私も想定しています。
今回のアル・ナスルのように1部でもほしがると思います。

韓国人選手のJリーグや湾岸への流出の背景(のひとつ)にはウオン安があることは否めないでしょうし、おおきく円安リアル高にふれたりしたら可能性はより大きくなるのかもしれないです。

海島健さん

海島健さん (2)

2009/08/13 21:39

サイトヲさんへ


詳しいサウジリーグ事情、ありがとうございます。
アル・ナスルが超人気クラブとは(現在の実力からすれば)意外でした。

80年代の黄金時代を知るファンが多いのでしょうね。

我がバーレーンVS サイトヲさんのサウジアラビア(アジア5位決定戦)もじわじわちかづいてきました。




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