アラーの国のフットボール

中東の超有名ブランド「ガンバ大阪」


海島健さん

海島健さん (2)

2009/08/31 23:11

 8月26日にG大阪FWレアンドロ(24)がカタールのアルサードに移籍することで両クラブの合意が成立した。今夏のブラジル人ストライカーのJリーグから「中東リーグ」への移籍は2人目。日本のファン、とりわけG大阪ファンは「このリーグ戦の大事な時期にまた強奪か!」といった感想を持つかもしれない。

 近年、毎年のように起きるJリーグ出身外国人FWの中東流出(輸出成功?)。一体、その背景にあるものは何なのかを考えてみたい。

 

uimishima090831 

 

 まずはここ最近で話題になったJリーグから中東各国リーグへの外国人選手移籍をまとめてみた(移籍時期などはアラブ系のサイトを参考にした)。

選手名  ~ Jリーグ最終所属クラブから(場合によってはほかのチームを経由して)中東所属クラブに移った時期。

レアンドロ     09年08月  G大阪→アルサード(カタール)
ダビ        09年07月  名古屋→ウムサラール(カタール)
バレー       08年07月  G大阪→アルアハリ(UAE)
マグノ・アウベス  07年11月  G大阪→アルイテハド(サウジアラビア)【08年9月にウムサラール(カタール)に移籍 】
クレメンソン    07年夏   G大阪→クルゼイロ(ブラジル)→アル・ガラーファ(カタール)
エメルソン     05年7月   浦和→アルサード(カタール、一時フランスのレンヌへ移籍もフィットせず復帰)→フラメンゴ(ブラジル)

 こうしてみると以下の点が分かる。
 1)Jリーグの最終所属クラブは6人中4人がG大阪で断トツ。ほかは浦和、名古屋で、いずれもクラブもアジアCL制覇(浦和)、今年のアジアCLベスト8勝ち残り(名古屋)といったアジアサッカー界の有名クラブである。
 2)「中東」移籍とはいえ、実際に選手を獲得しているクラブはカタールのクラブが圧倒的で、他がUAEとサウジアラビアの金持ちビッグクラブに限られる。(要するに湾岸リッチクラブ)
 3)選手獲得は湾岸各国リーグのオフシーズンである夏に行われる。Jリーグはシーズン真っ盛りなので、獲得は欧州などから引っ張る場合よりも強引にならざるをえない。
 4)驚くには値しないかもしれないが、全員がブラジル人ストライカー

 さて、なぜ「中東(=湾岸)」サイドが毎年のように多額の金を積んでJ出身のブラジルストライカーを「強奪」したがるのか。ここから先は筆者の私見だ。
 バーレーン代表の多くが所属するカタールスターリーグ(=QSL)は筆者も見る機会が多いし、J出身のストライカーが加入したクラブは気になってQSLでなくてもそのクラブの試合をテレビでたまに見たりするのだが、その際にここ2-3年のJリーグがらみで湾岸にいて感じることは主に3つある。

 1)Jリーグのブランド化
 2)G大阪の超有名ブランド化
 3)中東リーグ、なかでもカタールリーグにおけるJ出身ブラジル人ストライカーの活躍(特に加入した初年度)

である。
 1)のJリーグのブランド化というのは、特にここ2-3年におけるJクラブのアジアCLでの活躍やクラブW杯での浦和、G大阪の善戦をこちらサイドでは驚きとある種の憧れをもって見ていることから生じている。アジアCLでは今年も16強にJクラブのすべてが進出したり、浦和が07年に続けてG大阪が08年にアジア王者になったりしたことなどがその憧憬に拍車をかけていることだろう。

 2)については、まずこちらのサッカー中継の場面から説明したい。たとえばQSLのゲームなどをテレビで見ているとアナウンサーが「ガンバオオサアーカー」と絶叫することがある。これはガンバ出身のマグノ・アウベスやクレメンソンがいいプレーをしたりゴールを決めたりするとなされることが多く「いいですか、この選手はあのアジアの王者クラブG大阪から持ってきたんですよ」というニュアンスに聞こえなくもない。ちょっと前までだと「浦和レッズ」もよく聞いたのだが、08-09シーズンはとにかく「ガンバオオサアーカー」の回数が非常に多かった。

 さらに08年12月のクラブW杯、マンチェスターU戦でのG大阪の戦いぶり(08年12月18日、マンチェスターU5-3G大阪)も、こちらでは絶賛されたのでG大阪の超有名ブランド化はさらに進んでしまったのではないだろうか(詳しくは過去コラム「アラブ世界がG大阪を絶賛、カミカーゼ・ヤバン!」参照)。

 3)についても過去コラムと大きくダブらない程度にごく簡単にまとめてみよう。カタールリーグを例にするといいだろうが、このリーグの優勝チームは00-01年シーズンから順に、アルワクラ(00-01)、アルガラーファ(01-02)、カタールSC(02-03)、アルサード(03-04)、アルガラーファ(04-05)と連覇チームなしであった。05年7月にエメルソンがカタールに上陸し、アルサードの一員になる。このエメルソンが入ったアルサード、とくに彼の2年目のシーズンは18ゴール(27試合)の大活躍で05-06シーズンと06-07シーズン連覇を果たし、アルサード黄金時代を予感させた。

 しかし、そうはいかなかった。ライバルチームのアルガラーファは07年の夏に大きな補強を行い、当時ブラジルのクルゼイロに在籍していたクレメンソンを引き抜いた。クレメンソンは1年目に27ゴールを挙げ得点王になり、07-08年度はアルガラーファが覇権を奪回。続く08-09年度も20ゴールの活躍で、チームは2連覇となったのである。結果だけを見るとJ出身のブラジル人ストライカーはまるでリーグ優勝のための「お守り」みたいではないか(ちなみに、08-09年度のQSL得点王はサウジアラビアのアルイテハドからカタールのウムサラールにやってきたマグノ・アウベス=25得点)。

 なるほどアナウンサーが「ガンバオオサアーカー」と何度も何度も叫んでいたわけだ。そういう流れの中で、大金を投じてまで7月にウムサラールがダビを獲得し8月にアルサードがレアンドロを獲ったことの意味や彼らに託された非常に大きな期待などが見えてくる。

 やはり優勝チームがころころ変わるお隣りUAEリーグにおいても「お守り神話」は実現。去年、バレーの加入したアルアハリも08-09年シーズンを制し、同国で行われるクラブW杯の出場権を見事に手にしている(もっともバレー自身はUAEリーグへの適応に意外にてこずったようだ。2年目の活躍に期待しよう)。

 チームが優勝するには他にもいろいろな要素があるとはいえ、これってかなりすごいことのように思う。
 湾岸の金持ちクラブが極東担当のスカウトあたりに「今回の補強はとにかく日本から頼むよ。お金はいくらでも出すから、できればアナウンサーがよく絶叫しているあのチーム。エーとなんだっけ、そうそうガンバオオサカから。レオナルドね。だめなら今年のアジアCLでゴールをたくさん挙げているのがいいな。レナトとかジュニーニョあたりかね。あとはJリーグの得点ランキングの上位につけているのも見ておいて。エジミウソン、ダビ、マルキーニョスなんかはビッグクラブ在籍だしいいんじゃないかね?日本の生活経験者はなぜかこちらでのフィットも早いからな」なんてささやいていそうだ。まあ、勝手な想像(=創造)ですが。

 以上述べてきたような事情が湾岸サイドにはあるため、また9月あたりにもう1、2件あってもおかしくはないだろうし、ダビとレアンドロの大活躍でウムサラールはカタールカップ戦(と今年のアジアCL)を制し、アルサードはカタールスターリーグを早々独走でリーグタイトル奪還なんていうことになったら、今度は来夏を待たずにまた湾岸スカウトたちは動き出したりするのかもしれない。

※写真は移籍直前、G大阪のサポーターにあいさつするレアンドロ(撮影・益子浩一)

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コメント (12)

ブルーカーペットさん

ブルーカーペットさん (0)

2009/09/02 12:22

ブラジル人FWの中東流出の件ですが、都内在住でエージェントの資格を持たないモロッコ人モモ・モハメッド氏が暗躍しているようですよ。
中東側からは「良質のブラジル人FWが欲しい」という要求があり、モモ氏がその時にJで好調な選手を売り込むようです。
例えば、今年の移籍でもカタール側は「スピードのあるFWが欲しい」と言っていたのにモモ氏はとにかく結果が出せるということでダヴィ選手を送り出しましたがタイプ的には少し「?」が付く移籍でした。モモ氏側は多少タイプが違っても結果が出せる選手を優先しているんでしょうね。

yuiyuiさん

yuiyuiさん (0)

2009/09/02 16:50

ちょっと残念な気がしますが、儲かればいいんじゃない?
ってゆー考えはダメでしょうか? >ウミケンさん

プーアールさん

プーアールさん (0)

2009/09/02 21:47

エメルソンは札幌→川崎→大阪→カタール
マグノ・アウベスは大分→大阪→サウジ
バレーは大宮→甲府→大阪→UAE
レアンドロは大宮→山形→神戸→大阪→カタール

つまり、ガンバ大阪はハマチやワラサを買ってブリに育て上げ、その脂の乗ったブリを中東の王様が高値で競り落とし美味しくいただくということですね。^^

流通ルートができあがっているのですから、後は商売としてしっかり確立することが肝要です。

まぁ、今回のレアンドロ騒動などは戦力的なダメージはありますが、ビジネスとしては想定内といったガンバ側の落ち着きを感じます。

後は年に1・2匹あがる大型マグロに依存しないチームを国産ハマチやワラサあたりで中期的に構築する手腕が必要なのでしょう。

次は若くて活きの良いペドロ・ジュニオールというマグロが中東の食卓にあがりそうですよ。^^

海島健さん

海島健さん (2)

2009/09/03 00:12

ブルーカーペットさんへ

日本側の情報ありがとうございます。

>ブラジル人FWの中東流出の件ですが、都内在住でエージェントの資格を持たないモロッコ人モモ・モハメッド氏が暗躍しているようですよ。
中東側からは「良質のブラジル人FWが欲しい」という要求があり、モモ氏がその時にJで好調な選手を売り込むようです。
例えば、今年の移籍でもカタール側は「スピードのあるFWが欲しい」と言っていたのにモモ氏はとにかく結果が出せるということでダヴィ選手を送り出しましたがタイプ的には少し「?」が付く移籍でした。モモ氏側は多少タイプが違っても結果が出せる選手を優先しているんでしょうね。

湾岸のお金持ちが鷹揚にかまえてショッピングしているような感じが伝わってきました。

また結果がでちゃうんでしょうかね?

海島健さん

海島健さん (2)

2009/09/03 00:20

Yuiyuiさんへ

はい、にんまりするくらいのしたたかさで基本的にはOKでしょうね。

衝撃が大きすぎるようであればその入ってきたお金で中東のどこかから逆に買ってもいいのだけれども、まあそういうことは今のところ例がないわけですし。

海島健さん

海島健さん (2)

2009/09/03 00:30

フーアールさんへ

おお、日本側は準備完了ですか。
やはり9月にもう1件はかたいでしょうか?

こういった選手たちの中東での活躍を日本側は期待しますか?
僕はこれからも彼らの動きを注目します。
まあ、これ以上活躍すると大変かもしれませんね。

プーアールさん

プーアールさん (0)

2009/09/04 21:10

>こういった選手たちの中東での活躍を日本側は期待しますか?

僕は心情的には期待します。
エメルソンでもバレーでもレアンドロでも、やはり想い入れがありますからね。
ちょうど、パク・チソンやフッキに対する想いと変わりません。
世知辛いかもしれませんが、自分のキャリアアップを求めて移籍を繰り返す選手達を認めてあげなければいけないんだと、個人的には想っています。
彼らにとっては、日本に来たことだって、そのサイクルの1つなのですからね。

また、外国人に限らず選手間の移籍の自由化が進む事が、Jクラブチームの新たな新陳代謝を進めてくれると期待しています。
今後はフロントが優秀でないクラブチームはどんどんと衰退していく筈です。
ヴォルフスブルクの例もありますから、企業スポーツそのものは否定しませんが、プロ化を目指すチームがあまりにも中途半端な体質のままなのは、今回のような不況がくれば総倒れの危険性をはらみますからね。

Jリーグ機構にとっても、J出身選手達の中東での成功は大いにプラスではないでしょうか。
中東リーグを彼らが席捲することで、Jリーグへの興味や憧憬やブランド化が進めば、計算できる放映料という旨味も見えてきますからね。
アジアのプレミアリーグ化を目指すJリーグにとっては、彼らは貴重な営業マンだったりするのではないでしょうか。^^
個人的には無いと想いますが、将来的にJリーグが外資への経営権の自由化まで見据えているのであれば、中東は最も重要なエリアになりますしね。

個人的には、ダヴィはまだ完成された選手ではないので、そちらで成長できる環境が揃っているかどうかが大きなポイントに想えます。
ただし、レアンドロは既に完成された選手ですから、体調さえ万全であれば、そちらでもかなり活躍するでしょう。
僕も応援したいと想いますので、また貴重な情報を教えてくださいね。

海島健さん

海島健さん (2)

2009/09/05 01:33


フーアールさんへ

貴重なコメント、大変ありがとうございました。

>Jリーグ機構にとっても、J出身選手達の中東での成功は大いにプラスではないでしょうか。
中東リーグを彼らが席捲することで、Jリーグへの興味や憧憬やブランド化が進めば、計算できる放映料という旨味も見えてきますからね。
アジアのプレミアリーグ化を目指すJリーグにとっては、彼らは貴重な営業マンだったりするのではないでしょうか。^^

全く同感です。
Jにとっては非常にありがたいことだと思います。
「去るものは日々に疎し」は人間の常であり、日本人にはそれがことさら強い気がします。だからこそJからこちらに来た彼らの姿を追い、折にふれレポートしたいと考えています。

海島健さん

海島健さん (2)

2009/09/05 05:32



エメルソン、湾岸に復帰。

9月4日付けのAfc.comによりますと、UAEのアル・アインがフラメンゴ在籍のエメルソンを獲得した模様。

アル・アインはUAEリーグ最多のリーグ優勝9回を誇る、同国の名門チーム。
ただ、ここ5シーズンほどはリーグタイトルからは遠ざかっており、「起爆剤」「お守り」の役割も期待されている?

海島健さん

海島健さん (2)

2009/09/05 05:48



QSL第1節(9月12日と13日)でいきなりウム・サラールvsアル・サードとなり、レアンドロ、ダビ、マグノが集結。

試合後は3人で仲良く飲み会?
「先輩」マグノがQSLについて語る?

海島健さん

海島健さん (2)

2009/09/05 05:52

ダビの活躍でウム・サラールが快進撃!!

カタールは現在、リーグ戦が始まる前のシェイク・ジェッシム杯を行っています。
4チーム(X4グループ)によるグループリーグ(3試合)はマグノ・アウベス(5ゴール)とダビ(3ゴール)のJ出身コンビで1位通過。

リーグ王者アル・ガラーファ(リヨンからあのジュニーニョも加入した)との準決勝では、ダビが延長戦で勝ち越しゴールを決めて決勝進出です。

決勝は今日の夜9時からです。

海島健さん

海島健さん (2)

2009/09/05 06:00



ウム・サラール優勝

アル・ホールを下して優勝したようです。(テレビ放映なし)

2-0のスコアで、なんとマグノの2ゴール。
「お守り神話」また続きました。



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