アラーの国のフットボール

大陸間POはアラブ世界vs白人国家の代理戦争?


海島健さん

海島健さん (2)

2009/10/15 01:30

<W杯予選大陸間プレーオフ:バーレーン0-0ニュージーランド>◇10日◇第1戦◇マナマ
 W杯へ最後の関門、大陸間プレーオフ初戦は、バーレーンサポーターの大いなる落胆でゲームセットとなった。ホームで行われる「大一番」ではなぜか得点できない赤の軍団。9月5日のマナマでのサウジアラビア戦以上にオールホワイツ(ニュージーランド代表)を圧倒的に攻め立てたが、ことごとくフィニッシュに失敗した。湾岸系のあるテレビ番組では「きっかけさえつかめれば、6-7点入っていてもおかしくない試合」と評されたほどだ。

 シェイク・サルマン・ビン・ハマド・アルカリーファ皇太子もご観戦になったこの「世紀の紅白戦」。3万5000人の大観衆が期待したのは「格下」ニュージーランド相手に楽勝だっただけに、バーレーン本国のサポーターはドローの結果に、うなだれるばかり。試合の労をねぎらい「まだまだいけるぞ」と大いなる拍手をゲーム後にしたのは国外からのバーレーンサポーター、たとえばクウェートからの応援団(クウェートサッカー協会が組織したグループとアル・カディ-シアが組織したグループが目立った)だったのが印象的だった。

 

umishima091014 

 

 バーレーンサポーターが楽勝を、最低限でも勝利を期待したのはいくつかの要因がある。
 (1)サウジアラビア相手の超劇的(ロスタイムンに失点したが直後に同点でドロー)なアジアPO勝ち抜きで更に自信を深めたこと。
 (2)バーレーン代表にもけが人などはほとんどなく、比較的暑さの残る季節にホームで初戦を迎えられたこと。
 (3)相手はFIFAランク100位前後のチームであり、あのタイ代表なんかにもコロッと負けるくらいのレベルといった表面的なインフォメーション以外のニュージーランド代表に対するまともな情報不足。

 そして(1)~(3)にもまして大きかったのがマスメディアによる「煽(あお)り」。今回の場合はバーレーン自国のメディアというよりも、周辺湾岸各国のメディアが「煽った」と言えそうだ。バーレーン-ニュージーランドという大陸間POの組み合わせは、アジアのアラブ勢、特にGCC諸国にとってはGCC代表vsよそ者白人国家ととらえられており、「頼んだぞオレたちのバーレーン!! ニュージーランドなんか軽くぶっ倒してW杯出場だ」といった勢いで特番が組まれ応援されている。アジアのアラブ勢のW杯出場ゼロという不名誉は何としても避けたいだけに、気合の入ったサポートをしている。

 GCC諸国で共通して視聴されるスポーツ番組には、アル・ジャジーラ・スポーツ(カタール系)やアル・カス・スポーツ・チャンネル(カタール系)、アブダビスポーツ(UAE系)、サウジスポーツなどがある。これらの局のほとんどがこの大陸間PO関連のニュースを扱っており、同胞の湾岸バーレーンを全面的に応援してくれている。これらの局のアナウンサーやキャスターたちは、たとえばカタール人であれば「われらが誇る強力カタール代表を倒してのグループ3位確保のバーレーン代表、あなたたちにやれないわけはない。どう考えても大勝でしょう」となり、UAE人なら、「ここ最近はUAE代表よりもはるかにいい結果を出し続けるバーレーン代表。我々が以前に到達したW杯にあなたたちが出られるのは保証しますよ!!」となるのだから、試合前にテレビ番組がすでにお祝い状態となってしまう。

 マチャラ監督がいかに選手やサポーターに慢心を諌めたところで、こういった特番を繰り返し見ることになるバーレーンサポーターが高揚した気分でスタジアムにやってきたとしても責められないだろう。ゴールを決めきれない選手に落胆の声をあげ、励ましてあげられたのも前半まで。後半になってもチャンスで外すといつしか罵声や怒号になり、萎縮した選手がまたはずしまくるという負のスパイラルが止まらないゲームだったといえよう。

 一緒にスタジアムにいったマナフ君が「いや、どうしてバーレーン代表はここ一番のホームで弱いんだろ? まず点とれないよな。不思議だよね」などと首をかしげていたが、バーレーンサポーターの「応援」スタイルが自国代表の足をひぱっているのは否めない。 過去のデータがそれを証明してくれる。バーレーンの真の意味での「絶対に負けられない戦い」=過去2大会のプレーオフの結果を列記してみよう。

ドイツ大会アジアPO(対ウズベキスタン)
2005・10・08(A)ウズベキスタン1-1バーレーン
2005・10・12(H)バーレーン0-0ウズベキスタン
<アウェーゴールでの勝ち抜け>
 
ドイツ大会大陸間PO(対トリニダード・トバゴ)
2005・11・12(A)トリニダード・トバゴ1-1バーレーン
2005・11・16(H)バーレーン0-1トリニダード・トバゴ
<マナマの悲劇…W杯出場を逃す>

南アフリカ大会アジアPO(対サウジアラビア=KSA)
2009・09・05(H)バーレーン0-0KSA
2009・09・09(A)KSA2-2バーレーン
<リヤドの奇跡…アウェーゴールで勝ち抜け>

南アフリカ大会大陸間PO(対ニュージーランド=NZ)
2009・10・10(H)バーレーン0-0NZ
そして、第2戦は?
2009.11・14(A)NZ?-?バーレーン

 ホームの4試合はなんと得点ゼロである。これで3回のうち2回は勝ち抜けは奇跡的かもしれない。バーレーンのPO勝ち抜けがいかにアウェーでの戦い=アウェーゴールにかかっているのかの証明ともいえよう。今回も1-1とか2-2の引き分けで勝ち抜けたりすると、PO4試合4引き分けでW杯初出場の珍記録達成になるが、可能性はかなりありそうだ。

 というわけで、クウェートからの応援団同様、筆者も初戦0-0の結果にもかかわらず「これはいけるぞ」と思わずにはいられなかったというのが本心だ。ホームで無失点のドローということは、次は引き分けなら敗退することはない。1-1以上の引き分けなら勝ち抜けだ。仮に1点を先制したらニュージーランドは90分以内で最低2点を取らないと敗退が決まる。逆にバーレーンは先制を許しても、追いつけば勝ち抜けることができる。
 そんなアウェーゴールのルールも有利に働くが、何といってもシュートをはずしても自国民の罵声は全く聞こえない(時差+10時間の地球の裏側)のは大きなアドバンテージだと思う。いや、冗談でなく。のびのびと異国の地ではつらつとプレーするバーレーン代表が目に浮かぶ。

 ガルフエアーさん、今からでも遅くはありません。ご検討中のアウェー戦格安ツアーは今1度よくお考えください。バーレーンサッカー協会さん、まちがっても1000人規模の大型格安弾丸ツアーとかを企画しないでください。バーレーン人の皆さん、新型インフルエンザ大流行の折です。アウェーの一戦は無理に高いお金を払ってまでウエリントンまでいったりせず、マナマ市内のマクハ観戦あるいは自宅観戦にしましょう(=それだけで皆様の「熱い」ハートは選手の心に届くはず)と願うのは、異邦人の僕くらいだろうか。

※写真はスタジアムで応援するバーレーンサポーター(撮影・海島健)

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コメント (7)

プーアールさん

プーアールさん (0)

2009/10/15 17:44

海島さん、お疲れ様でした。
やっぱりホームのプレッシャーに呑み込まれてしまったようですね。

ただ、裏を返せばバーレーンのストロングポイントは、およそプロらしからぬストイックさです。

今回は第2戦がAWAYなのでバーレーンにとっては良い条件が揃っていると想います。

遠い異国でいつもの大声援は無いでしょう。
ホームでのNZはもう少し骨があるでしょう。
この2つの条件が揃えば、ジョンあたりがあの時のフセイン・サルマンのような1発を決めてくれるのではないでしょうか。

ただ、海島さん同様に充分にAWAYの状況を味わえない過剰なサポートは逆に心配です・・・。

海島健さん

海島健さん (2)

2009/10/16 00:27



フーアールさんへ

>ただ、裏を返せばバーレーンのストロングポイントは、およそプロらしからぬストイックさです

そのストイックさをうんだのがホームゲームでの地元民の「厳しい応援」なのでしょうか。しかし過度の罵声はあまりにスポーツマンを冒涜していると感じました。逆に日本代表の「やさしい応援」は日本が階段を少しずつ登っていくのに適していた時期もあったかなと思います。今はどうか??

おのおの国民性もありますが、バランスは難しいですね。

yuiyuiさん

yuiyuiさん (0)

2009/10/16 22:04

結局、バーレーンはワールドカップに前進したと思っていいんですか?

海島健さん

海島健さん (2)

2009/10/17 02:45

個人的にはそう考えています。
yuiyuiさんはどう思われますか?

海島健さん

海島健さん (2)

2009/10/17 02:52



たった今友人から電話があり、ショッキングなニュースが。

FWアラー・フバイル(カタールのウム・サラールからバーレーンのアル・アハリに復帰)がバーレーンリーグの試合中に大怪我をした模様。
接触プレーではなかったのに全治6ヶ月とのことでマチャラ監督も頭を抱えています。

hosatoさん

hosatoさん (1)

2009/10/17 12:00

全治6ヶ月ですか。
中心選手が不在になったことで、チームが結束することを祈りたいですね。
98年のフランスみたいに・・・

海島健さん

海島健さん (2)

2009/10/18 04:12



Hosatoさんへ

精神的支柱でありバーレーン代表の顔であるアラー不在は大きいですね。

現在のバーレーン代表はそれほど過度のアラー・フバイル依存体質ではなく、他のFWもいい選手がいますので何とか乗り切ってほしいところです。

6ヶ月ですとW杯本大会はぎりぎりです。



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