アラーの国のフットボール

エジプト戦大勝がアラブ世界に与えた衝撃


海島健さん

海島健さん (2)

2007/10/22 20:10

<アジア/アフリカチャレンジ杯:日本4-1エジプト>◇10月17日◇長居

 日本-エジプト戦はここ湾岸でもアラブ世界にネットワークを持つテレビ局であるART等で放映されたので、筆者もライブで観ることができた。昨年のクラブW杯で日本でも顔を知られるようになったアブトリカやバラカト、メタエブといったアルアハリ所属の主力を欠いたスタメンは真の意味でのエジプト代表とは言い難いもので敗戦は仕方がないものと思っていたのだが、1-4という惨敗という結果にエジプトメディアの反応はかなり厳しいものとなった。

 試合翌日の18日、エジプト紙アルアハラムは「エジプト代表、ひどい内容で日本に惨敗-日本のコンピューターがエジプトのシステムを破壊」との見出しを掲げ「今回の大敗でわがエジプトはアジアアフリカ諸国の前で大恥をかいてしまった。前半がうまくいかなかったのに、後半も戦略を大きく変更させることもなく、ズルズルと敗戦。一方の日本は強くて速く、しかも攻撃のオプションを沢山見せつけた」と自国代表を酷評し、日本を称えた。

 エジプト代表の屋台骨を支えるアルアハリの選手を呼ばなかったのは、アフリカCLの決勝があるためなのは、日本でも報道された通り。この決定に大きな力を持つエジプトサッカー協会サミールザヘル会長自身もアルアハリのファンであるため、今回の大敗で「アルアハリのために、エジプト代表を犠牲にした」といった非難も国民の間から出ている。

 

 

※写真はエジプト戦でゴールを決めるDF加地(撮影・加藤哉)

 エジプト代表のハッサンシャハタ監督は、アルアハリ所属の選手が日本戦に使えないと知った時点でこの試合の延期をも考えたようだが、結局、他のメンバーで戦うことを選択しての負け戦となってしまった。

 さらに19日の同紙には「この日本戦をきっかけに監督解任問題が起きている。今日(19日)アフリカ杯本戦の組み合わせ抽選があるが、このままでいいのか」と問題提起をしている。「エジプトサッカー協会サミールザヘル会長は『ハッサンシャハタ監督は今まで2005アフリカ杯優勝などの功績があるのだから、今回の大敗は大目に見てくれ。新しい選手が経験をつんだのが収穫だった』と監督を擁護した」とも報道。今年は日本戦の前まで3勝5分けと負け知らずだったものの、ブルンジやボツワナ、湾岸で不調のクウェートあたりに苦戦して何かと批判されることの多かった監督をかばった形だ。アフリカ杯の開幕(2008年1月20日、ガーナ)を3カ月後に控え、残された時間もそれほどなく、監督続投の方が得策と考えているのであろう。

 余談になるが、カイロ在住の日本事情にも詳しいマーヘル氏は「アルアハリの主力抜きで行くなんて日本にも失礼だ。こういう形で約束を破ったりしたのだから、両国サッカー協会の関係も悪くなるだろうし、今後日本には呼んでもらえなくなるかもしれない」と語っていた。

 さて、この日本大勝のニュースはエジプト以外の湾岸諸国でも報道され、結構なインパクトを与えた様子である。筆者はバーレーン時間の昼過ぎに日本-エジプト戦をテレビ観戦し、同日の夜、マナーマのスタジアムに駆けつけて五輪最終予選のバーレーン-ウズベキスタンを見ていたのだが、スタジアムで会った何人かのバーレーン人が、日本がエジプトに大勝した結果にびっくりしていた。ダイジェスト版で見たというジャベル氏は、「アフリカ杯王者、アラブサッカー界の雄を相手に4-1とは信じ難い」と素直に驚いていた。「エジプト代表は今回飛車角抜きだったんだよ」と説明しても「それにしたっていい選手はいるだろう。2-1とかじゃなく、4-1なんだからビッグニュースだ」と譲らない。日本のマスコミなどでは評価の難しい試合などとされているが、日本代表に対するリスペクトがこちらでは回復している。

 確かに湾岸各紙が写真入りでこの日本-エジプトの試合を得点経過など簡単にではあるが報道している。エジプト代表の裏事情にまでは深く突っ込んでいないから、(日本があのエジプトをぶちのめしたのか)と単純に読者は感じることであろう。日本代表がモンテネグロに勝ったとか、欧州中堅のスイスに逆転勝ちといったニュースでは、こちら湾岸の人には今ひとつピンとこないはずであるがエジプトが相手だと注目度が違うのは当然だ。

 日本代表が圧倒的な強さを見せ付けた2000年アジア杯レバノン大会。アラブ勢が日本を捕まえられそうで捕まえられなかった2004年アジア杯中国大会。そして、今回の2007年アジア杯でついにサウジアラビアが日本を倒し、今後も日本とアラブ勢の力関係がアラブ優位に推移していきそうだという思いを打ち砕くニュースになったという意味では、アラブ勢とも恐らく当たるであろう2010年W杯のアジア3次予選前の締めくくりとしては、日本にとって良いものになったのではないだろうか。

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コメント (20)

yuiyuiさん

yuiyuiさん (0)

2007/10/22 20:52

 日本では「ああ、そう」レベルで済んでしまうような試合だと思いますが、負けた方は結構、厳しい状況に置かれてしまうんですね。
 アジアカップの時のコラム、楽しかったです。また、読めるかと思うとうれしいです。

松屋圭祐@エヌスクさん

松屋圭祐@エヌスクさん (18)

2007/10/23 20:24

アラブのニュースはなかなか入ってこないので楽しみが増えました。日本は結構リスペクトされているんですね。カタールのクラブチームにはビッグネームな選手が所属していると思うので、そこらへんの情報も期待しています。

サイトヲさん

サイトヲさん (1)

2007/10/24 00:17

結局エヌスク入ってしまいました。(笑)
これからもよろしくお願いします。
カタールでの敗戦後、リヤドの学生たちからは「日本は残念でしたね~」と言う慰めの言葉をもらえるかと思いきや、サッカーフリークの学生すら五輪予選はあまり注目していないようでちょっと拍子抜けしました。
嫁は衛星放送の加入に消極的ですが、何とか自宅にARTを導入したいと思います。
今後ともよろしくお願いします。
>biscaさん
写真は先日のカタールvs日本戦の際に撮影したドーハのアルサッドスタジアムです。
非常にきれいで観戦しやすいスタジアムでしたが、トラウマを背負わされたのでもう二度と行きたくありません…。(涙)
サウジ人も、日本のサッカーについては「組織的でコンピュータのように精密」という印象をよく口にしますよ。

海島健さん

海島健さん (2)

2007/10/25 22:02

yuiyuiさんへ

ご愛読ありがとうございます。

エジプト側の厳しい反応に私もびっくりしました。
メンツを重んじるお国柄がよくでていると思います。

松屋圭祐@エヌスクさん

松屋圭祐@エヌスクさん (18)

2007/10/26 10:07

>サイトヲさん

貴重な写真、ありがとうございます。

サウジとカタールは結構行き来しやすいもんなんですか。

 

サウジリーグにも大物いますよね。フィーゴも入団寸前までいきましたし。

よかったら教えてください。よろしくお願いします。 

サイトヲさん

サイトヲさん (1)

2007/10/26 21:10

>biscaさん
サウジ~カタール間の行き来について。
GCC(湾岸協力会議)に加盟している6カ国(サウジ、クウェート、UAE、バーレーン、カタール、オマーン)については、現地人の行き来はほぼ自由です。
パスポートさえ持っていれば簡単な通関手続きで国境を越えることができます。
GCC諸国は互いに陸続き(バーレーンは島国ですがサウジと橋でつながっています)ですので、自分の車でそのまま行き来が可能なので、サウジやUAE、バーレーンなどは色々な国のナンバープレートの車が街中を行き交っています。
イスラムの戒律が厳しく、国内では酒が飲めないサウジ人は、週末になるとバーレーン(イスラム国ですが酒が比較的自由に飲めます)に行き、酒を楽しんでいます。
ただし、外国人は、観光目的でサウジアラビアに入国することはほとんどできません。(わずかにサウジ航空主催のツアーが認められているのみ)
また、サウジ在住の外国人(非GCC諸国人)は、かなり面倒な手続きを踏んで一時出入国ビザを取得しないとサウジ国外には出られません。

サイトヲさん

サイトヲさん (1)

2007/10/26 21:27

>biscaさん
サウジリーグについて。
そうですね、フィーゴの契約破棄は、サウジ国内にいるサッカー好きを悲嘆の底に落としました。(まあ、契約締結のニュースを聞いた時からマユツバものだとは思っていましたが…)
カタールほどではありませんが、サウジリーグの有力クラブも外国人を積極的に補強しています。
昨シーズンまでは、元ブラジル代表MFデニウソンがアル=ナスルに、メキシコ代表FWボルヘッティがアル=イテハドに在籍していました。
また、間接的ではありますが意外と日本との縁が深いです。
国内人気ナンバー1のアル=ヒラールの現監督のオラロイはジェフでプレーしていた元Jリーガーですし、昨シーズンの一時期は、トニーニョ=セレーゾがヒラールの指揮を取っていたこともありました。
日本に来るブラジル人選手の中にも、過去サウジリーグでのプレー経験がある選手が何人かいます。

松屋圭祐@エヌスクさん

松屋圭祐@エヌスクさん (18)

2007/10/29 10:27

>サイトヲさん

いろいろありがとうございます。

ボルヘッティいつの間に?デニウソンは今はMLSのダラスにいますね。

 

サウジとは11月に北京五輪予選で対戦ですね。

サウジ国内では五輪代表はどんな扱いなんでしょうか。

 

日本では96年のアトランタ五輪予選から続くいい流れがアジアカップで負けてしまったので、11月は勝ちたいところです。

海島健さん

海島健さん (2)

2009/11/13 06:12

エジプトvsアルジェリア(11月14日)


W杯アフリカ最終予選3組はエジプト(勝ち点10)vsアルジェリア(勝ち点13)の一騎打ち。最終戦はこのカードをエジプトのカイロで。ここ10日ほどは両国のメディアが激しく応酬した模様。


FIFAも危機感をいだいたこの両国の対戦。
マッチコミッショナーは通常1人ですが、5人体制をとってしっかり監視。


もしもエジプト2-0勝利の場合は勝ち点、得失点差なども並ぶので第3国(湾岸GCCでやるとの説もあったが、このエリアは在住エジプト人が多いのでアルジェリアが却下した。おそらくスーダン)での再試合で決着をつけるとのこと。


12日についにアルジェリア代表がカイロ到着。
その際にエジプトのファンが殴りかかるアクシデントが発生し3人が負傷。
このマッチアップ、読者の皆さん興味あります?

ロベルトヤマさん

ロベルトヤマさん (1)

2009/11/13 08:54

海島先生、初めまして
ロベルトヤマ@セレッソ大阪サポのオヤジです

いつも驚きの濃ゆ~いGC諸国フットボールのニュース楽しんでいます

バーレーンvsニュージーランドは実力では必ず勝てる相手ですよ<バーレーン
でもそこは一発勝負の怖さ
バーレーンがうまく先取点が取れるようにと祈ってます

さてさて海島先生が振ってくださったエジプトvsアルジェリアですが何か不穏な気配がしますね
元々1位通過だけのアフリカ予選はいつも突き詰めると1対1のタイマン勝負になりがちですがエとアのようなW杯常連国同士は珍しいですね

日本では中々情報が入りにくいのでまた宜しくお願いします

海島健さん

海島健さん (2)

2009/11/13 18:12



ロベルトヤマさんへ


ご愛読ありがとうございます。
おっしゃるとうりでして、明日は本当にひやひや観戦です。


バーレーン代表に意識が行き過ぎていて北アフリカのこの「世紀のもめごと」、
レポートが後手に回っています。


また、すさまじい事件がおこりましたらこのコメント欄に書き込むなり、新しいトピック立てをするなりしないとなと考えております。

またよろしくお願いいたします。

golgolさん

golgolさん (1)

2009/11/13 18:36

ロベルトヤマさん>>エとアのようなW杯常連国同士は珍しいですね>>エジプトがW杯に出場したのは1934年と1990年の2回だけですし、アルジェリアもW杯に出場したのは1982年と1986年の2回だけですから、W杯常連国とは言えないのでは。
カメルーン(W杯5回出場)とナイジェリア(W杯3回出場)もしくはチュニジア(W杯4回出場)と誤解されてませんか?

ただ、エジプトはアフリカ選手権では最多優勝6回しているんですよね。なぜ、W杯予選で実力を発揮できないかいつも疑問です。


海島さん>>すさまじい事件がおこりましたら>>多分、頼まれもしないのに、にわとりの血などで互いの陣営(チームが雇っているのではなく、勝手にその側についた)の呪術師がまじないをかけていますよ。そして、試合が終わった後、『わしのおかげで勝ったのじゃ』と勝った方の代表に金品を要求するでしょうね。
これは絵空事ではなく、今も実際に行われていることですから。

海島健さん

海島健さん (2)

2009/11/13 20:44




魔術の話はよく耳にします。
詳しくはどんな感じかご存知ですか。

これをやって代表から追放された選手もいますね。

golgolさん

golgolさん (1)

2009/11/13 22:21

エジプト代表は選手たち自身がまじないをしております。ロイターで報道されました。
http://jp.reuters.com/article/sportsNews/idJPJAPAN-30138720080204 
以下引用一部加工
『2008年2月1日、サッカーエジプト代表はアフリカネーションズカップの勝利を祈願し『トレーニング中』に牛1頭を犠牲にいけにえにした。エジプトは4日、準々決勝でアンゴラと対戦する。

 現地にいたロイターのカメラマンは、練習場に放された牛を選手らが取り囲んで押さえつけ、1人が首の部分を刺して殺したと話している。

 エジプト代表の関係者によると、この儀式はチームに幸運をもたらすためのもので、牛の肉は寄付されるという。』

他、信頼できるソースかどうか分かりませんが、某ブログから引用します。
『2002年アフリカ・ネーションズカップ。アフリカ各国政府が黒魔術禁止に乗り出した時期である。2月7日準決勝、カメルーン対マリ。試合開始前に事件が起きた。

カメルーン代表がグラウンドの状態を確かめている最中に、カメルーンのヌコノGKコーチが警官に逮捕され、連行。理由はコーチがグラウンドにお守りを隠そうとしたため、といわれている。
コーチはすぐに釈放され、カメルーンは無実を主張。

カメルーンのスポーツ大臣が国家間の争いになると警告。試合後、謝罪のためマリの大統領がカメルーン代表を訪問。

アフリカサッカー協会会長は「ピッチには身分証なしでは入れない規則。ヌコノコーチは身分証をつけていなかったため警官は規則に従い取り押さえただけ」と発言。
これにより事なきを得た。

この大会、カメルーンは見事2連覇を達成。
自分の呪術によりカメルーンは優勝出来たとして、1人の呪術師が国に対して500万円以上にのぼる祈祷料を請求。
この呪術師は誰の依頼も受けておらず、開催地のマリにも行っていない。
優勝にあやかって儲けようとしただけであろう。』

2002年のアフリカ選手権の呪術のごたごたは私も目にしましたから、検索すればすぐ出てくるでしょうね。

海島健さん

海島健さん (2)

2009/11/14 01:34

そんなことありましたね。
にわとりのテーマは友人にふってみます。

なかなか教えてくれなさそうですが、この手の「タブー」は。

海島健さん

海島健さん (2)

2009/11/18 23:20




スーダンでの決戦PO、エジプトvsアルジェリアももうすぐ(3時間後)です。
両国のサポーターが自国の国旗をふりまわし、市内のあちこちで
「激突」する映像がTVでながされています。


バーレーンにはエジプト人が非常に多く、
今晩8時半からのゲームではマナマのカフェなどは
エジプトのホーム状態になります。

海島健さん

海島健さん (2)

2009/11/19 03:03

エジプシャンが集まるカフェはあえてさけて再びベランダカフェですが、満席です。

今、前半30分経過で0-0です。

golgolさん

golgolさん (1)

2009/11/19 04:37

おめでとう。アルジェリア。

途中から、アルジェリアの選手が交代する際などに、試合会場に駆けつけたアルジェリアサポーターに『盛り上がれ、盛り上がれ』と万歳してあおっていたのが印象的でした。

欧州プレーオフはウクライナ0-1ギリシャ残り3分。第1戦が0-0ですから、このまま行けば、米W杯から4大会ぶりのギリシャ出場になりそうです。

海島健さん

海島健さん (2)

2009/11/19 06:07

はい、煽っていましたね。
小競り合いや乱闘もどき、倒れこんでの時間稼ぎなどがおおい<いかにも>の試合でした。

海島健さん

海島健さん (2)

2009/11/19 07:18

ギリシャ、決めましたね。
私はボスニアvsポルトガルを見ていました。

ムスリム世界としてはボスニアに出場してほしいというのもあったでしょうが、ポルトガルもこちらでは人気があります。



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