アラーの国のフットボール

難敵ベトナムを下したUAEの3トップ


海島健さん

海島健さん (0)

2007/11/03 15:31

 10年W杯南アフリカ大会アジア地区予選が始まった。1次予選はアジアランク6位以下の38チームが参加で、ランク6位から24位までをポットA、同25位から43位までをポットBとし、それぞれのポットから1チームずつが対戦することになった。バーレーン在住の筆者にとっては、バーレーンーマレーシアもかなり気になる組み合わせであったが、一番の危険な注目カードは何といってもベトナム-UAEであった。

 ベトナムとUAEといえば、日本代表が07年アジア杯の1次リーグで同居した国として日本のファンにも記憶に新しいだろう。また、地元ベトナムが07年ガルフ杯王者UAEを倒した(ベトナム2-0UAE)ことでアジア杯1次リーグのビッグサプライズの1つになった。

 相手がベトナムに決まったUAEは準備におおわらわになる。ハノイでのトラウマもつい最近のこと(7月8日)であるから、無理もない。早速、東南アジア勢との親善試合を計画。シンガポール戦(アウエー、9月12日)、インドネシア戦(これは実現せずレバノンとホームで対戦)、タイ戦(アウエー、10月3日)とこなし、10月8日の第1戦であるハノイでのゲームをバシールサイード(アルワフダ)のゴールで辛くも1-0勝利をものにする。

 第2戦の4日前にアジアCLの準決勝アルワハダ(UAE)-セパハン(イラン)があり、UAE代表を多く抱えるアルワハダ所属の選手の疲労も心配されたが…。

 10月28日にUAEのホームで行われた第2戦、UAEは第1戦同様4-3-3の布陣で臨んだ。DFとMFのメンバーは全く同じであったが、3トップの中央に大黒柱イスマイル・マタル、左にモハメッドシェヒ、右にアハマドモハマッドという19歳コンビをすえ、これが大成功する。

 

※写真はアジア杯の日本戦を前に調整するUAEのマタル(撮影・たえ見朱実)

 前半12分にアルワハダのチームメートでもあるモハメッドシェヒからパスを受けたイスマイル・マタルがゴールを決めると、UAEの攻撃陣の動きが非常にスムーズになった。スピードとテクニックを兼ね備えたティーンエージャーFWの2人が左右のスペースを駆け上がり、中央のマタルにパスを供給しチャンスを演出。逆にマタルが下がってボールをもらいに行き、左右のどちらかにワイドに展開と司令塔プラス2トップのような形もサエをみせる。そうしてあいたスペースにボランチなどが攻撃参加をするのだから、UAEに2点目が入るのはもはや時間の問題でしかない。前半39分には、マタルがヒールで出したワンツーをアハマドモハメッドがうけ、中央に切れ込んでベトナムDF2人をかわしてゴールで2-0。

 後半8分もマタルのアシストを受けたモハメッドシェヒが決め、3トップ全員が得点を決めた。特にマタルはこの3得点のうち1ゴール2アシストとすべての得点に絡む大活躍であった。終わってみれば5-0の大勝であったが、ゲーム後の選手やサポーターの喜びぶりは格下を軽く一蹴したというものではなく、難しい相手に大差をつけられてラッキーだったというニュアンスが見てとれた。

 一方のベトナムだが、試合前日の会見でアルフレッド・リドル監督は「イスマイル・マタルに仕事をさせなければ、UAEはチームとしてあまり機能しなくなる。彼にはマンマークをつけ、しぶとく1-0で勝ち、延長、そしてPK戦に持ち込む」などと話していたのだが、3トップのすばらしい連動性を見せつけられて、全く予想外の展開になってしまったといえそうだ。

 試合翌日のUAE紙カリージタイムスは、「UAE、ベトナムのハードルを乗り越える」というタイトルで、「早い時間帯での先制点が大舞台での国際経験の少ないベトナムに大きな打撃を与えた」などと報じている。

 地元UAE開催の2007ガルフ杯優勝で歓喜の幕を開けたUAEの今年であったが、アジア杯に向けてケガ人が続出。さらに世代交代を本格的に行わなければならない時期がアジア杯とも重なっての痛恨の1次リーグ敗退。そして、今回ベトナムへのリベンジを果たし10年W杯南アフリカ大会1次予選突破でほっと胸をなでおろしたというUAEの1年であった。

 年の初めにガルフ杯のタイトルを取ったとはいえ、攻撃は長い間イスマイル・マタル(とフェイサルハリル)におんぶにだっこ状態だったチームにとって、この若きFWモハメッドシェヒとアハマドモハマッドの台頭はチームにとって非常に大きな光明であろう。抜群の決定力はもちろんのこと、器用に小技を利かすこともできるマタルとこの若手FWの相性もとてもよいように見える。

 ブルーノ・メス監督もこの3トップに大きな手ごたえを感じたに違いない。もしかするとこの試合はUAEにとって大きなターニングポイントになるかもしれないが、もう少し時間をかけてみないと何ともいえないので、3次予選以降のUAEの戦いぶりもより注目していきたい。中東サッカーウオッチャーの筆者にとっては3次予選の組み合わせ(11月25日抽選)がいろいろな意味で楽しみだ。

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