アラーの国のフットボール

わがバーレーンが韓国を倒します


海島健さん

海島健さん (0)

2007/11/21 00:00

 北京五輪アジア最終予選B組は、日本が入ったC組と同様、11月21日の最終戦までもつれる混戦となっている。勝ち点11で首位の韓国を1差で“わが”バーレーンが追っており、最終戦は韓国で直接対決となる。常識的に考えればホームの韓国が有利なのは間違いない。だが、韓国でやるからこそ、バーレーンにチャンスあり、と筆者は考えている。

 その理由を説明する前に、五輪代表に対するバーレーン国内の反応は、というと、これがいまひとつの状況なのだ。
 11月17日の第5戦、ホームのシリア戦は、5時間前に韓国がウズベキスタン相手に引き分けており、勝てば単独首位となるという大事な一戦だった。状況からすればかなりのサッカーファンがスタジアムに押しかけてもおかしくはなかったのだが、バーレーンサポーター用に開放されたメーンスタンド(いつものように無料)の半分が(残る半分はシリアサポーター用)埋まっておらず、1万人足らずに過ぎなかった。

 これにはこの国が抱える特有の事情が影響しているのは間違いない。その象徴的な出来事がバーレーン代表の顔と言ってもいいFWアラー・フバイルの代表引退発表だ。シリア戦の10日ほど前に発表され、サッカー協会側との話し合いもうまく行かず、11月14日付のGDN紙にも「これは最終決定である」との記事が出た。 

 アテネ五輪予選日本戦でのアラー・フバイル(撮影・鹿野芳博)

 引退の理由は「一身上の都合」としか出ていないのだが、プロリーグ(今年カタールのアル・ガラーファからアル・クウェートに移籍)のスケジュールの合間をぬってバーレーン代表に参戦しても、スタメンで起用されなかったりしたことが影響しているようだ。金銭的なものは十分得ている(今年の6月に45万米ドルという※GCCの選手としては最高の移籍金でアル・クウェートに移った)ので、バーレーン代表で、さらに肉体的負担をかけたくないという気持ちもありそうなこと、などがサッカーファンの間ではささやかれている。

 「あれ、アラー・フバイルって若くなかったっけ?」と思った読者の方がいたらかなり鋭い。いわゆるアテネ五輪世代で、バーレーンの黄金世代の顔ともいえる彼は、まだ成長が見込める25歳だ。

 バーレーンの北京五輪世代は、国籍を取得したバーレーン人(ナイジェリアやチャド、モロッコ出身)を多数取り込んでおり、黄金世代といわれたアテネ五輪世代を超えるチームになろうとしている。そしてこの両世代が競争しながら融合すれば、今度こそW杯出場が可能であろうというサッカー協会の思いは伝わってくる。

 ただ、これがアテネ世代のスパースターであるサルミーンやアラー・フバイルの出場機会減につながったりすると話は別になってくる(A代表でも北京五輪世代はかなり活躍している)。そのタイミングでのアラー・フバイルの代表引退という大事件だったのだ。

 助っ人も1人や2人ならいいが、ここまで露骨にかき集められ、その結果、母国の英雄がベンチを暖めるような状況になるとバーレーン人のナショナリズムとか、民族感情を逆なでするのは容易に想像がつく。ホームで試合をしていても、アフリカ出身の選手が犯したミスにはかなり厳しいブーイングが浴びせられたりしているのは、そんな感情の発露と言っていい。

 湾岸のチームは、UAEのA代表を筆頭に、U-22カタール代表やU-22サウジアラビア代表を見ても分かるように極端な内弁慶が多いのだが、このU-22バーレーン代表というチームはホームで弱く(1勝1分け1敗)、アウエーに強い(2戦2勝)。それは、こういったことと無関係ではないだろう。ちなみに日本はホームで2戦2勝、アウエーで1勝1分け1敗と全く逆で、これがホーム&アウエーでは普通だ。これでバーレーンが韓国で戦うからこそチャンスがある、と書いた意味がお分かりだろう。

 バーレーンにとって最高のシナリオを考えてみよう。韓国戦では“ホームの重圧”から解き放たれ? のびのびとプレーをして韓国を撃破して五輪切符をゲット。国中がお祭り騒ぎになって、今までのいざこざも吹っ飛ぶ。国民とサッカー協会の嘆願を聞き入れて、アラー・フバイルとフセイン・アリ(バーレーンのペレ、前回のアジア杯のあと引退)が代表復帰を果たし、オーバーエージ枠で北京五輪出場する。両世代の融合がうまくいき、その勢いで2010年W杯も…。

 湾岸サッカーウオッチャーとしては、21日の日本-サウジアラビア戦とともに、同じ日に行われる韓国-バーレーンの結果が気になって仕方がない。そういえば、アジア杯ではわがバーレーンが1次リーグで韓国を倒している。韓国サポーターには悪いが、北京五輪はアジアの友人たちの活躍をテレビで応援してもらおうではないか。くれぐれも「アウエーで力を出したバーレーンに、謝罪と賠償を…」なんてことは、言わないでほしいものだが。

※GCC(Gulf Cooperation Council)…中東地域における軍事・経済・文化などの地域協力機構である湾岸協力会議のこと。バーレーンやサウジアラビアなど6カ国で構成されており、その結びつきは強い。

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コメント (3)

sukekiyoさん

sukekiyoさん (0)

2007/11/21 05:33

バーレーンを応援します。がんばれバーレーン!

サイトヲさん

サイトヲさん (1)

2007/11/21 07:06

アラー=フバイルの後ろにいるの、今ちゃんですよね。なつかしい…。
さてさて、バハレーンの「外弁慶」ぶりの影にそのような事情があったとは、興味深いです。
帰化選手といえば、先日のサウジvsカタール戦で退場したカタールのイブラヒマ=ナディアはカメルーン出身だそうで、正直なところ「またかよ…」と長嘆息してしまいました。
サウジ代表にも相当数の「買われた選手」がいるという指摘もありますが、サウジの場合、国籍を取るには最も厳しく閉鎖的と言われているワッハーブ派のムスリムになることが絶対条件になりますので、個人的には帰化選手は少ないのではないかと思います。

それはともかく、バーレーン代表には頑張ってほしいと思います。オーストラリアを追うイラクにも。
中東にいると、やはり近隣の「同胞」の動向は気になってしまいますね。

…とは言いつつも、国立の試合では、アル=ジョハル監督(「あの」8失点を喫した02年W杯のサウジ代表監督)に日本での2度目のトラウマを味わって欲しいと願ってしまう私なのでした…。
(そういえば、アル=ジョハルを支持しないと言っていたうちの学生は、理由として02年の惨敗を掲げていました。
サウジ人にとって、02年W杯は抜き難いトラウマとして記憶に刻まれてしまっているのかもしれません。)

海島健さん

海島健さん (0)

2007/11/22 18:18

sukekiyoさん
サイトヲさん

ご声援ありがとうございました。

アウェーでのびのびプレーしていましたが、倒せませんでした。ドイツW杯の大陸間プレーオフといい、今回といいサッカーの神様はバーレーンには厳しいようです。

バーレーンの場合、ホームゲームの権利を放棄したら、めちゃくちゃ成績が上がるかもしれません。

>中東にいると、やはり近隣の「同胞」の動向は気になってしまいますね。

おっしゃるとうりでして、サウジ、バーレーン、イラクとすべて気になっていました。そして全部だめでしたね~~

W杯3次予選など今後も中東勢とのからみは続きます。



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