アラーの国のフットボール

湾岸はミラン応援団「浦和をぶっ倒す」


海島健さん

海島健さん (1)

2007/12/12 00:15

 10日のクラブW杯準々決勝、浦和-セパハン(イラン)戦はここバーレーンでも注目された。セパハンというイラン(=ペルシャ)のチームと浦和との対戦が、アラブ世界のバーレーンで注目を集めたのにはわけがある。ご存知の方もいるかと思うが、バーレーンにはペルシャ系の住民が非常に多い。祖父や曽祖父あたりの代からバーレーンに住み着いた人たちが多く、ペルシャ系バーレーン人のほとんどはイスラム教シーア派である。ちなみにイランはシーア派が大多数を占める国で、バーレーンでは少数派のスンニ派が権力を握っている。

 筆者の知人にもペルシャ系の人は多く、バーレーン代表-イラン代表の試合をスタジアムに一緒に観戦に行った時も、筆者がバーレーン代表を応援している横で知人がイラン代表に声援を送ってるのに気づき、初めて彼がペルシャ系であることが分かったということもあった。

 11月に行われたアジアCL決勝でセパハンは浦和に1分け1敗だったこともあり、この大舞台での決戦を前に「今度こそ浦和をぶっ倒してやるぞ!!」とペルシャ系の友人は元気一杯だったのだが、結果は1-3の完敗。インフルエンザなどの影響があったのかセパハンの選手が本来の調子ではなかったのだろうが、それでも内容的にも完敗と言ってよく、試合のことを話題にするのもちょっとどうかなという感じであった。

 セパハン-浦和

※セパハン-浦和 後半9分、ゴールを決め永井(左)と喜び合う浦和FWワシントン(撮影・野上伸悟)

  浦和-セパハン戦のあと、普段通っているジムに顔を出すといきなりペルシャ系のアデルに会ってしまった。特に肩を落としてといった風情でもなく、開口一番「ACミランが浦和をボコボコにするよ!!」と言うとニヤリとした。もうすでに頭を切り替えたかと感心してしまった。

 何もセパハンを負かした浦和を逆恨みしているというのではなく、「わがACミランが」といった口調で「浦和を倒す」と言っているのだ。これには湾岸独特のサッカー文化とも言うべき背景がある。

 06年のW杯ドイツ大会当時のコラムでも紹介したことがあるが、湾岸諸国ではブラジル代表とアルゼンチン代表が絶大な人気を誇り、地元民のW杯観戦はこのサッカー2大国を中心に行われる。この両国のスーパースターを多く抱えるスペインリーグとセリエAは当然のように人気が高く「昨日のゲームはすごかったね~~」というのはRマドリードやバルセロナそしてインテルやユベントス、ACミランのことを話題にしていると考えなければならない。

 自国代表の選手が活躍するカタールリーグやクウェートリーグ、バーレーンリーグの動向にはまったくと言っていいほど関心がなく、欧州リーグのビッグクラブをマイチームとして追っかけている人がほとんどなのも、多くの日本のサッカーファンとは、かなり違うところだ。

 したがって、ペルシャ系バーレーン人にとっても、たしかにセパハンの負けは悔しいが、我々の“兄貴”であるACミラン(いつも熱狂する欧州CLの頂点に立ったチームは、まさに彼らにとって兄貴のような頼もしい存在)がきっとセパハンの無念を晴らしてくれるであろうと、気持ちの切り替えが簡単なようである。ましてや、(ペルシャ系ではない)アラブ系のバーレーン人にとっては、クラブW杯はACミランの登場と同時に開幕するようなものであろう。ちなみにチュニジアのエトワール・サヘルはアラブ系のチームであるが、前回のアル・アハリ(エジプト)のようなビッグクラブではなく、また地理的にもエジプトよりさらに西のいわゆるマグレブ諸国(北アフリカ北西部に位置するアラブ諸国)であり、かなり遠いためか今のところ注目度は低い。

 というわけで、こちら湾岸ではセパハン-浦和よりもACミラン-浦和の方がずっと注目度も熱狂度も高いということになる。W杯ドイツ大会のブラジル-日本戦同様、こちらの喫茶店で観戦すると日本人は大アウエーの状況に置かれるのは確実だ。

 彼らがブラジル代表や欧州のビッグクラブなどに熱を上げるのはさまざまな歴史的背景や文化的背景、政治的な理由などもあるので、それはそれで1つのあり方ではあるだろう。ただ、こういった場所に身を置く日本人としては、W杯やクラブW杯といった世界的な大会で、自分の国の代表や自分の国のクラブチームを応援することのできる幸せをあらためて認識させられるのも事実である。

 湾岸在住の日本人が胸を張って歩けるのは、この兄貴ACミランを負かしてからであろうか? W杯3次予選を前に強烈な印象をこちらの人に与えてほしいと、遠く中東から願っている。選手や関係者が想像もしないような遠い場所にも、浦和の勝利を願っている人間がいることを分かってもらえれば幸いというものだ。

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コメント (2)

biscaさん

biscaさん (11)

2007/12/19 20:48

1-0という結果は現地ではどういう受け止められ方をしたんでしょうか?
W杯予選を前にびびってくれるといいのですが。

海島健さん

海島健さん (1)

2007/12/21 22:16

biscaさんへ

浦和ーACミラノ戦の前日に欧州CL第6節がありましたが、例えばバルセロナースツットガルトには深夜多くのファンが喫茶店につめかけました。が、浦和ーミラノにはほとんど客がいなかったのです。ランチタイムという時間帯のせいもあるとは思いますが、、、、、

いずれにせよ、こちらのファンをびびらせるというほどではありませんでした。

ミラノとの真剣勝負の機会を日本の選手がもてたこと、そして今回は湾岸の選手はその機会がなかったのでちょっとしたアドバンテージだと考えています。



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