アラーの国のフットボール

ハンドボール再予選、中東バーレーンは日本支持?


海島健さん

海島健さん (1)

2008/01/17 15:56

 「アラーの国のフットボール」では毎回中東のサッカー情報をお伝えしているが、今回は日本でもかなり話題になっているハンドボールについてお伝えしたい。そんなわけで特別版「アラーの国のハンドボール」でご了承いただきたい。

 ハンドボールの北京五輪アジア予選が「中東の笛」と呼ばれる中東びいきの判定が原因でやり直しが決まった問題は、こちら中東のマスコミでも取り上げられており、論調も熱を帯びてきている。日本での報道を見る限りでは、あたかも中東諸国が一致団結して支持しているかのような印象を受けるが、内情は決して一枚岩ではなく、中東諸国の中でもアジア連盟を牛耳っているクウェートに対する逆風が吹き始めているようだ。

 16日付のバーレーン紙アル・ワサットは「IHF(国際ハンドボール連盟)の取った対応は正しい。AHF(アジアハンドボール連盟)に今後ともプレシャーをかけ続けろ」というタイトルで、元※GCC(Gulf Cooperation Council=湾岸協力会議)ハンドボール協会会長のモハメド・アリ・アップル(現バーレーン五輪協会員)の談話を載せている。

 その内容を紹介すると「IHFがアジア予選のやり直しを指示したのは正しい。アジアハンドボール界では、ほとんどすべての年代の大会で(クウェートが実権を握っている)AHFのせいで被害をこうむり続けた。こういった決定や処分はもっと(少なくとも5年ほど前の)早い時期に行われてしかるべきだった」というものだ。

 さらに同氏は続ける。  「現状のアジアの大会に出場するくらいなら、IHF管理下の国際大会に出た方がいい。以前バーレーンにもW杯や五輪出場のチャンスがあったのだが、同じような不正のせいで出られなかった。AHFでクウェート人が実権を握るようになってから、まともな運営が望めなくなった」。

 そして最後にこうだ。

 「IHFは今後も(AHFに)プレッシャーをかけ続けてほしい。アジアのチーム、特にバーレーンは被害を受け続けたから」。

 くどいようだが以上は日本や韓国のハンドボール関係者ではなく、正真正銘、中東バーレーンの五輪協会員のコメントだ。

 過去にハンドボールのバーレーン代表も同じような苦い経験をしてきたとのことだが、その当時、公に抗議できなかった理由の1つは「クウェート王室に対する配慮や恐怖が大きかった」と語るバーレーン人は多い。何を言ってもどうせ無視されるのがオチといった空気が濃厚だったこともある。さらに個人的な印象だが、バーレーンの学校や病院のいくつかは、クウェートの資金援助で建てられたということも大きいように思う。

 それが今回はIHFが日本などの抗議を認め予選のやり直しが決まったことで、こういった記事が出始めたのだろう。

 今回のこの記事に対する私の周囲のバーレーン国民の評判は上々で「(遅まきながら)よくぞ言ってくれた」という感じの人が多い。今後もこの流れが加速して、大きな変化につながることを望む声がほとんどである。

 冒頭にも書いたが、日本では今回の件を「中東の笛」といった表現で中東、特にクウェートが加盟するGCCなどの湾岸諸国をひとまとめにして批判する風潮もあるように感じられるが、少なくとも今回の記事を読む限り、バーレーンの国民は日本を応援しているように思える。サッカーのバーレーン代表サポーターを自認する筆者としては、日本のファンにはこうした状況があることを分かっていただければ幸いだ。引き続き、この問題はウオッチしていきたい。

 ※ GCC・・・中東地域における軍事・経済・文化などの地域協力機構。サウジアラビア、バーレーン、カタール、クウェート、オマーン、UAEの6カ国で構成され、諸国内の人的交流が非常に多く、いざとなったときの結束が比較的固いことで知られる。

 <写真はハンドボールの北京五輪男子アジア予選の日本対クウェート戦で試合終了後、判定をめぐり一時騒然とする両チームの選手ら(共同通信)>

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コメント (10)

yuiyuiさん

yuiyuiさん (0)

2008/01/17 19:17

本当にアラブは分からない…

DERUPIさん

DERUPIさん (0)

2008/01/17 23:03

なんか、日本では中東をひとまとめにして悪者にしている感じがありますが、海島さんのコラムを読むと、結局クウェートだけが悪者ということでいいんですかね。

サイトヲさん

サイトヲさん (1)

2008/01/18 15:05

海島先生、遅ればせながら明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

ハンドボールアジア予選の問題、サウジではどうとらえられているのかちょっと興味が出てきたので、学生に聞いてみたいと思います。
(そういえば、一人ハーフクウェイティがいたな…。)
ただ、うちの学生に聞いても、問題の存在自体を知らなかったという答えしか返って来ないかもしれませんが…(汗)。
そのくらい、サッカー以外のことは眼中にない(そして、ニュースに全く関心を持たない)連中なので…。

海島健さん

海島健さん (1)

2008/01/18 17:46

yuiyuiさんへ

やはり少しわかりにくいでしょうか。
機会があればもう少し詳しくいきます。

海島健さん

海島健さん (1)

2008/01/18 17:53

DERUPIさんへ

「汚い部分を持っているのはお互い様」というのは前提として持っていると思います。

この件に関してはあまりに利害が対立しすぎ続けたからなのだと感じています。

yuiyuiさん

yuiyuiさん (0)

2008/01/18 18:00

 アラブはわからない、は「本当に状況が複雑で一筋縄でいかないんだな」という記事を読んでの感想です。
 記事はとても楽しく読めました。続報を期待しています。

海島健さん

海島健さん (1)

2008/01/18 18:00

サイトヲさんへ

新聞読まない人多いですもんね。
ただこの問題に関しては少しずつ関心が大きくなっています。

「笛」に関しては、(特に域内大会では)クウェートとサウジがかなり力を持っているという人もこちらにはいますが、その辺もつっこんでみてください。

サウジ人自身は否定する気がしますが、、、、

海島健さん

海島健さん (1)

2008/01/18 18:04

yuiyuiさんへ

一筋縄でいかないアラブの状況を楽しんでいただきありがとうございます。

今後もこのややこしい世界を追いかけます。

biscaさん

biscaさん (11)

2008/01/18 19:32

「笛」に関して力を持っているのがクウェートとサウジというのは

やはりお金持ちの国とそうじゃない国(つまりオイルマネー)ということで分かれているんでしょうか?

海島健さん

海島健さん (1)

2008/01/19 17:51

biscaさんへ

お金の力は大きいように感じます。
GCCの中ではバーレーンとオマーンが下のほうに属しているといわれています。
この両国にはひがみのようなものもあるかもしれません。

以前はGCCの大会ではこの両国が常に最下位争いをしていました。その当時は(スポーツの)実力もなかったのですね。

しかし、いまやこの両国の実力を(特にサッカー)はじめからなめてかかる国はないでしょう。



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