冒険教授・後藤新弥の「おやじ冒険談」

高尾山で25KG背負って、転んだ


後藤新弥さん

後藤新弥さん (1)

2009/03/19 13:09

高尾山を25KG背負って歩いた
  ~~こけて左膝をまた痛めてしまった~~
   <アンラッキーは4度続く>
D090317

 木登り名人が、弟子が低いところまで下りてきた時に「気をつけろ」と注意した。もっと高いところの方が危険なはずだが「安心しあっと木に事故は起きる」と、諭したという。
 (引用)~軒たけばかりになりて「あやまちすな。心して降りよ」と言葉をかけ侍りしを、「かばかりになりては、飛び降るとも降りなん。如何にかく言ふぞ」と申し侍りしかば、「その事に候ふ。目くるめき枝危きほどは、己れが恐れ侍れば申さず。あやまちは安き所になりて、必ず仕る事に候ふ」~
 おなじみ、吉田兼好の「木登り」である。
 異論はないが、少し異論がある。
 このおやじ冒険ジャーなど、いつ、どこででもミスをして、けがをする。転落する。それを見て、孫は「お、オッコチー」と叫んで大はしゃぎする。
 だから、「もう大丈夫」というところでおやまちをしやすいのではなく、本当はそれが単に目立つだけのことではないだろうか。「あ、あんな所で転んでる」と。

 とはいえ、山などでは「実に言い得たり」と思うことがしばしばだ。
 今日もそうだった。

 東京人にとって格好のピクニックコース、高尾山へ行った。
 昨秋に左足を骨折、いまだにひざがちゃんと曲げられない。結局、周囲の筋肉を強化しながら自然回復の時を待つしかなかろうというのが、友人たちの忠告だ。
 よし、周囲の筋肉を強化しよう。ひざのリハビリのつもりで、ポリタンをかついで出かけた。高尾山口の駅で水を入れて、しめて重量25KG。これを背負って上ればかなりの強化トレになる。
 すでに正月に、これをやった。高尾山頂から城山へ出て、そこから相模湖へ下りる。
 休日は人が多いので、一方登山路は結構狭いので、人の迷惑になりかねない。平日は強化しほうだいだ(笑い)。あまり汗をかかないように、ゆっくりを心がけた。
 山はもう春だ。花が咲き初め、道のぬかるみも収まりはじめ、婦人軍の声がにぎやかだ。


 ひざをへんな角度で曲げないように気をつけながら、体幹、というより体軸をきつく意識し、そこにPわーを集めながらもそこからパワーを外に発散する感覚を求めながら、慎重に上った。
 山頂まで焼く1時間40分、城山まで通算3時間弱。
 そこで昼飯にした。

 まずいことがあった。
 正月に来たときよりも、路のコンディションがよいので、40分近くも速い。
 ひざが治り始めているのだ。
 人間、ここで抑えが効かなくなる。
 タイムなど関係ないのに、つい「正月より1時間速く下りれば、さぞおれはうれしいだろう」と、勝手に推測し、求めてもいないのに、つい自分と競争を始める。
 若い頃は、標準タイムの何割で上り下りした、などというのが、自己満足のものさしだった。恥ずかしいことだ。ところが、人間いくつになっても、こういうコンペティッションについ引き込まれる。信じていないのについきになる「占い」と同じだ。
 下り、飛ばしてしまった。
 それこそ「あと一息」、というところで木の根に躓いて、転んだ。やっぱり、やった。吉田兼好は偉い。患部の左ひざが、グニッといって、おかしく曲がる。おやじ真っ青だ。たいして痛くはないが、もし歩けなかったらどうしようと、寝ころんだまましばし動けない。心配で動けない。そろそろと足を動かし、軽いひざの(新たな)ねんざとわかるまで、冷や汗がたらたらと出た。
 サポーターを取り出してまきつけ、なんとかそのまま下りた。

 

 悪いことは3度続く。
 吉田兼好はそうはいわなかったが、おやじはそう信じている。
 案の定。通算4時間でなんとか相模湖畔の国道に出たが、 バスは出た後、次は50分待ちだった。相模湖駅まで30分、左足を引きずりながら歩いた。普段はバスなど恋しくないが、今日は乗って帰りたかった。
 駅に着いた。
 相模湖駅で停電があって、ダイヤが乱れています。
 そういう表示が出ていて、けれど代替え輸送を手配するようすもなく、結局夕暮れの駅まで1時間。とんでもなく遅れてきた「間引き運転普通電車」を待った。
 これで3つ。

 実は4つめもあった。
 ひざを痛めたので、欧米の選手が使う塗り薬を下山の途中で塗ったのだが、これが強烈なハッカの匂いを伴って、乗り込んだ電車の中でぷんぷん。花粉症気味の人の鼻を刺激するらしく、あっちこっちでクシュン、クシャン。おわれおやじは下を向き、雨具で太ももを覆って、少しでも脚部に塗り込んだ薬が発散しないよう、必死の防戦。でもこう言うときに限って、電車は混むし、。むんむんと車内ににおいが立ちこめる。
 一電車遅らせてもことは同じだ。
 じっと、突き刺すような視線、いぶかるような視線に耐えるしかない。
 ああ、地獄の中央線。

 山でも冒険はできる。海でもできる。でも、電車の中でもできるとは、知らなかったよ。
 トホホ。乗り合わせた皆様、ごめんなさい。

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