後藤新弥の「おやじ冒険談」

<スポーツ&アドベンチャー!>9メートル垂壁のピンクの突起にかじりつき…


後藤新弥さん

後藤新弥さん (1)

2008/04/18 13:40

 突起をつかんでぶら下がったが、ピンクのテープで示された次の足場がどえらく遠い。またが裂けそうだ。足先を伸ばしてもがいているうちに、手と腕の筋肉が消費期限を過ぎてしまった。ああ、落ちる!下で笑い声がした。東京・昭島市総合スポーツセンターで行われた「クライミング教室」に参加した。室内だからと軽く考えた。わが身は予想以上に重かった。腕力だけでは引き上げられない。あ、また落ちる!

地上9メートル。海津さんにロープで安全確保してもらい、ようやく垂壁の頂点近くにたどり着いたが(星野貢撮影)

沢登りより楽?

 高さ9メートルの垂壁がそびえている。一瞬ぎょっとしたが、無数の突起がボルトで留めてある。何だ、手掛かり足掛かりがこんなに豊富なら、沢登りより楽そうだと、初めは考えた。

 「うわあ、怖そう。帰ろうかな」。一応はおびえてみせたが、年配登山者の心のうちはそう謙虚ではない。「ふん、そのお年でたいしたものだと言わせてやろう」ぐらいの気概に富んでいた。それが。

 腰に安全ベルト(ハーネス)を着けて適当に壁に取り付くと「初心者コースはピンクです。ピンクのテープが張ってある突起だけを使ってください」。ベテラン指導員渡辺祥夫(65)さんが丁寧に教えてくれた。

 そんな。ピンクの突起は間隔は30~90センチだが、設置が意地悪だ。間隔が近くてもつめの先しか掛からない物や、手や足を押し付けて動きの支点にはできても、体を休めることはできない物ばかり。

 「その右に左足、少し上に左手」と渡辺さんが安全ロープを引きながら指示してくれるが、まごついているうちに腕の筋肉が疲労で腫れ上がってきた。つかまっていられない。惨敗だ。「僕、落ちまーす」。

「右足をクロスして左へ」。渡辺さんの指示が頭の中でねじれてしまう。腕を伸ばし、ひざを曲げて動く「基本」がなってない

山を楽しむため

 ハーケンなどで岩壁を登る従来の「アルパインクライミング」に対し、70年代から盛んになったのが人工的な手掛かりを使わない「フリークライミング」だ。

 ロープを使わずに5メートル前後の岩などを登るボルダリング、途中にロープの支点を掛けながら壁を登るリードクライミングなどがあり、人工壁のWカップ競技では日本人も活躍している。

 「目的やスタイル、場所によって細分化されてはいますが、もともとは同じ登山の技術。共通する部分が多いだけに、年配者こそこうした室内で少しでも体験しておくことが、より安全に山を楽しむ基礎になります」(渡辺さん)。

見上げるのは・・・

 高さ3メートルほどの横長の壁をスパイダーマンのように伝うのが「ボルダリング」だ。つい腕を曲げて腕力でかじりつくが、これでは足が次の突起に届かない。筋肉もすぐ疲れる。

 渡辺さんが「腕を曲げるのは一瞬だけ。突起をつかんだら腕を伸ばして力を抜き、柔軟にひざを屈伸してリズミカルに移動するんです」。下半身で動く意識が重要だ。それが難しい。

 難しいが、横壁で少し苦労すると、9メートルの垂壁登りがずっと楽になった。反り返った上級者用の壁に挑む勇気もわいた。勇気だけで、挑んだらすぐに落ちた。落ちたが、面白くなってきた。筋がいいかも。

「忍者返し」のように反り返った上級者用の壁。星野さんのアシストで勇気を出したが、結局これも落ちた

 今回の教室を開いた山岳会岩峯登高会(代表星野貢)の海津正彦リーダー(63)が笑う。「ところが実際の山では天候や緊張感から、ここで学んだ技術の3、4割しか発揮できません。そこが山の怖さ、面白さ。だからこそ逆に教室の意義もあるんです」。

 ここでも一般向けの教室が開かれるほか、都内近郊にも専門のジムが増えている。見えを張らずに楽しみたい。山歩きの自称ベテランが「初心に戻る」いい機会でもある。何より、若い女性が多い。かわいいお尻を見上げる快感は半端ではない。ムフフ。来週行こうか、ご同輩。

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