後藤新弥の「おやじ冒険談」

<スポーツ&アドベンチャー!>マラソンスイマー松崎さんが遠泳世界更新に挑む


後藤新弥さん

後藤新弥さん (1)

2008/05/01 15:39

 マラソンスイマーとして世界の海で活躍中の松崎裕子さん(45=米国在住)がこの夏、茨城県霞ケ浦の天王崎公園で湖での遠泳女子世界最長記録更新に挑戦する。昨年10月にフロリダ州オーランドで新記録を樹立したばかりだが、今回は83キロ前後が目標。8月23日前後、片道500メートルのコースを往復して約30時間で達成の計画だ。極限領域では幻覚症状が現れるという。下見のためにこのほど帰国した松崎さんに話を聞いた。

祭り騒ぎに!
 フロリダ州オーランドはディズニーワールドのほか、タイガー・ウッズら著名ゴルファーの居住地としても有名だ。そこに周囲2キロ、直径600メートルの小さな湖がある。昨年10月12日午後6時、松崎さんは泳ぎ始めた。
 「いつも練習している湖に500メートルのコースを設定して、これを往復。ディズニーの仕事をしているチャックさん(50)がカリブの海賊の衣装をまとって現れ、カヌーでの伴走役を仲間2人と交代で引き受けてくれた。話を聞いた町のスイマー50人が『私たちもリレーで100キロ泳ぎたい』と言い出して、楽しいお祭り騒ぎになった」。
 遠泳の最長記録は各種あるが、湖でウエットスーツなしの女子記録はそれまで80・3キロ。距離20キロ以上の超長距離のマラソン水泳世界シリーズに日本からただ1人出場を続けてきた松崎さんは「アルゼンチンのラプラタ川など、川下りとはいえ88キロ。距離に対しては自信があった」。事実体力的には問題がなかった。
 ところが。

浮きながら仮眠
 リレー組のスタートに時間を合わせたため、早起きの松崎さんはやがて睡魔に襲われた。「真夜中になってどうにも眠い。『私、寝るわ』と浮きながら5分ほど仮眠したがそれから幻覚が現れ、最後までずっと続いた。湖の底が盛り上がってきたり、ブイがゴリラに見えたり。最後、水から上がった時には『耳なし芳一』のように、全身に日本語の文字が書いてあった」。
 往復1キロごとに水中で、はちみつ入り紅茶を飲んだ。サプリのゼリーを約5キロ分。板チョコ3枚、おかゆも食べた。そのせいか体重は2キロ減っただけだった。
 「でも夜泳ぐのはやっぱり怖い。カヌーで伴走中だったバタフライのマスターズ水泳記録保持者でもあるジョンさん(52)にライトをつけてもらったら虫やコウモリが集まって、まるで罰ゲームのような惨状に。水温は28度だったが明け方は25度に下がり、風も出て体が冷えた」。
 それまで世界の誰も知らなかった遠泳の極限領域だ。それでも泳ぎ続けた。
 「子どものころ、嫌いなピアノのレッスンを一日中させられて、我慢することを体が覚えてしまった。ましてや水泳は好きですること、つらいと感じた瞬間は1度もなかった」。ゴールは翌13日午後11時55分。29時間55分で新記録82キロを泳ぎ切っていた。

仲間と意気投合
 本当は日本でやりたかったという。その夢が8月やっとかなう。霞ケ浦の東岸では毎年7月「ジョイフル・アスレティッククラブ」が遠泳大会を開いてきた。意気投合した。昨年の新記録は世界水泳殿堂などから認定を受けたが「今度は日本で記録を更新し、ギネスにも申請しましょうよ」。
 先週現地を視察。行方市天王崎公園前に500メートル往復コースを設定した。朝7時スタート予定。支援のシステムもめどが立った。
 「賞金もギャラも、何も出ません、有名人にもなりません(笑い)。でも、泳ぐことが好きな人たちには、きっと何かを語りかけられる。それだけでいいんです」。水の冒険者、さわやかだ。

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