後藤新弥の「おやじ冒険談」

<スポーツ&アドベンチャー!>三浦半島・佐島マリーナでモーターボート初操縦


後藤新弥さん

後藤新弥さん (1)

2008/05/16 15:22

 神奈川県三浦半島の佐島マリーナへ出掛けた。新型の船外機をテストするから乗りにこないかと、誘われたのだ。船酔いが怖くて尻込みしたら「操縦させてあげる。船長がいる場合は、臨時に交代して運転できるのだ」。ええっ、免許なしでもいいって本当か? 本当だった。50馬力エンジンの付いたモーターボートを、生まれて初めて操縦した。おやじ、船長になったのだ。

加速すれば安定
 こわごわアクセルのレバーを押し上げたら、グイーンと船が動きだした。波がドドーンとばかりにぶつかってくる。尻がどかんと突き上げられた。よさないか腰が痛い、年寄りをいじめるものじゃない。つぶやきながらさらに加速すると、船の先端が持ち上がった。持ち上がったまま船底が波とけんかし始める。
 ちょっと裕次郎っぽい気分、でも怖い。バランスを崩したら転倒しかねない雰囲気だ。思わず顔がこわばった。
 「いいんですか、これで」と、左隣に陣取った平岩昭宏船長(30=湘南サニーサイドマリーナ)に聞いた。船長、ふふっと笑って「これでは不安定ですね」。どうすれば? 「もっと加速すればいいんです」。エッ? 「今1分間3000回転でエンジンが回っているでしょう? タコメーターで確認してください。この回転域ではこのボートは先端が上がります。けれど4000回転(時速約35キロ)を超えると先端が下がってくるんです。安定します」。
 おっかなびっくり、座り直して覚悟を決めた。一気に回転を上げた。ブオーンと、50馬力ホンダ製船外機(BF50)の軽快なエンジン音が尻の後ろで響き始める。スポーツカーのようだ。と、前上がりになっていた船が、すっと水平近くに姿勢を戻し初めて、小気味よいほどハンドルさばきが楽になった。ヤッホーイ!写真右側が平岩船長、おやじ1人ではしゃぎすぎたか

ホンダ製船外機

 海中部分の形状設計の妙なのだろう、水しぶきは意外に跳ね上がらないが豪快だ。大きなカーブから急旋回。007の映画にもこんな場面があったっけ。
 自慢ではないが、船舶を運転する免許を持っていないのだ。モーターボートなんてのは金持ちの専売特許という時代を生きてきた。それを操縦するなんて夢の夢だと思っていたが、長生きはするのものだ。
 沖合で平岩さんから操船の手ほどきを受けた。緊急用のキルスイッチコードを手首に装着し、車と同じ丸いハンドルを回して舵(かじ)を切る。右手でアクセル・レバーを動かす。上に押せば前進、下なら後退。ブレーキは無用。ニュートラルに戻せば、船の抵抗ですぐ止まるからだ。
 船体はフィンランド製5人乗りで長さ5メートル弱。真ん中の船長席に陣取って教わった。興味津々だからものの5分で感じをつかんだ。回転を上げて滑走する時の「ひらり感」がたまらない。軽やかに風を切るオートバイの感覚がある。
 調子こいて急ターンしたら、こけそうになったが「まだまだ大丈夫」と、船長は顔色も変えない。右隣のホンダのスタッフは横を向いている。どうも、おやじ1人はしゃぎすぎてしまったようだ。少々ばつが悪かった。

基本は右側通行

 エンジンは水冷直列3気筒(808CC)。試乗したよりもっと高い5500~6000回転で本来の性能を発揮するらしい。専門家は「実用域の燃費とパワーが劇的に向上した」と話していたが、反応の俊敏さは素人にも体感できた。
 もっとも、いくら免許なしでもいいとはいえ、すべては船長の指揮下でのこと。操縦法はともかく、海の交通規則の基本は押さえておかないとと、前夜詰め込みで勉強はした。
 海上の基本は右側通行だ。これはバイキング時代からの慣習だとか。また舷側灯は右が緑、左が紅と決まっているから「紅を見たら相手に進路を譲るべし」とも。面(おも)かじは右旋回、取りかじは左旋回。ようそろ(宜候)が直進だ。
 でもそうした予習を忘れてしまうほど、海の上は自由で広かった。相模湾は明るい日差しにきらきら光って、波静か。見通しよし、にわか船長、笑顔よし。降りたら猛烈に腹が減った。

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