冒険教授・後藤新弥の「おやじ冒険談」

<スポーツ&アドベンチャー!>往復100キロ信号なし


後藤新弥さん

後藤新弥さん (1)

2008/09/19 11:21

 往復100キロ、信号が1つもないという。そんなコースが日本で取れるわけがない、ウソだろうと初めは思った。11月30日、沖縄県石垣島で初の自転車長距離走「石垣島アースライド2008」が行われる。けっこう起伏があるからおやじには無理と挑発されて「しゃかりき」試走にでかけた。海岸線は絶景だった。コースには本当に信号がなかった。けれど信号がなければどこで休むのだ。おやじの体に赤信号がついた。

えっ、これが瀬古の練習コースか!御神崎への往復コース、思わぬ激坂に苦痛と感動 

☆手強い坂道

 海岸線は初めは平たんで、南風。まだまだ夏だ。ロイヤルマリンパレス前の舟蔵公園をスタートして、名蔵湾に沿ってペースを上げた。コースは県道79号の往復だが、行きは西端の御神崎を回る。岬へ向きを変えた途端に急坂が始まった。
 灯台が見えてくる。20キロ、約1時間。あそこで休憩だ、とひと息で上ろうとしたら、右折した先が思わぬ激坂。道路が壁のように立ちはだかっている。ありゃっとばかり目いっぱい力んだが、ペダルを踏みっぱなしではギアが変えられない。うめきながら立ち往生。3秒後に横倒しになった。
 手ごわかった。今の基準では、自転車の距離100キロは驚くには当たらない。ところがここは海岸線の坂の傾斜が一定しない。見た目を裏切る。立ちこぎの短期決戦で勝負に出ると、その先も長い坂だったりして、ペースをかき乱される。野性的な海岸線だ。

豪快なにわか雨も快適なシャワーだ。マシンはアマンダ・カーボン24インチ車

☆瀬古が合宿

 伊原間サンセットファームを折り返してから55キロ地点の玉取崎に着くまでに、すでに2時間半。ボトル2本をがぶ飲みした。「坂はきつかったか」。ボランティアで展望台を掃除しているご老人に笑われた。聞けば、この島では老若男女がそれぞれのチームを組んで、70年ほど前から島内1周駅伝をやっているそうだ。「戦前は牛車や馬で伴走したが道が荒れていた。でも応援がまた楽しくて」。
 昔からスポーツが盛んな土地柄だった。「ほれ、マラソンの瀬古(利彦)君もよく練習にきて、灯台近くの急坂を走っていたよ」。えっ。あの激坂は瀬古のコースだったのか! 
 じわっと感動。
 帰路に就いた。その時、天が割れた。鉄砲球のような雨。「ああ助かった」。気温30度、晴天のままではゴールまでに干からびそうだった。シャワーの中を突っ走った。やがてすさまじい稲妻と大音響、東京とは異次元の雷に襲われた。兼城公民館で雨宿りした。

☆英雄も出た

 アースライドはレースではないが、トップの予想は4時間弱、制限時間は7時間。「走り応えがあったでしょう。前半抑え気味に行けば初心者の女性でも完走可能だけど、甘く見ると(笑い)」。ゴール手前、初開催に尽力した八重山自転車競技連盟の長谷川毅彦会長(49)に会った。
 埼玉県出身で元競輪選手(43期)。引退後は乗らなかったが、30歳でこの島に来て、「メタボ対策」で再び乗り始めたのが7年前。固定ギアでスパルタンな競輪用に対し「普通のロード車が実に楽しくて、乗り回すのが新鮮だった」。
 仲間のクラブ、ウインドフレンドは会員40人。活動は活発だ。「そう言えば、朝練をしている人3人と擦れ違いました」と言うと「ああ、情報はもう入ってます(笑い)。1人は私の息子、年配の人が新城幸也(23)選手の父貞美さん(54)でしょう」。
 また「えっ」だ。目下日本最強、9月のツール・ド。リムザム(フランス)でステージ優勝を果たした英雄が島の出身者新城だ。その父親と手を振ってあいさつを交わしてしまったぞ。

約6時間でゴール、ロイヤルマリンパレス前のビーチで足をつった 

☆6時間完走

 自転車がブーム。1日数百キロも走るグループなど、市民スポーツが新たな冒険領域に入っている。そんなチャレンジ精神を受けて立つのがアースライドだ。
 日本航空、日本トランスオーシャン航空と乗り継いで、羽田から5時間前後。
 確かに信号のない別天地だった。だから逆に休むきっかけが難しく、最後は体の赤信号が点滅し始めた。ホテル前のビーチに戻った。釣り人、数人。何が釣れますか? 聞いた途端におやじの足がつれた。
 でもこの痛みの、分かる人には分かるこの歓喜。
 石垣島、完走6時間。思い出、永遠。

 

石垣島アースライド2008

 ◆11月30日(日)8時スタート。制限7時間◆舟蔵公園~玉取崎展望台(往復約100キロ)◆募集400人(中学生以上)◆参加要項は公式サイトwww.earth-ride.jpで

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