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後藤新弥さん (1) |
2008/11/21 15:06
山では、とんでもないことが起きる。仕事ほどではないにしても、いつどこでどんな目に遭うか分からない。前回リポートした通り、御嶽山(3067メートル)中、長野県王滝川源流部の「百間滝」を探索した帰りに、通過中のがけっぷちで大岩が落下。飛びのいて下敷きは免れたものの左足首を骨折した。診断は全治2カ月、ひざも腰も痛い。山をなめた報いだろう、まさに「慢心」創痍(そうい)。以下はその「不始末書」である。 ☆木曽の御嶽山で「よく命が助かったな」と、幸運をわが事のように喜んでくれた仲間もいれば、松葉づえを見て「それ見たことか」と、ひざをたたいて狂喜する先輩もいた。いずれの場合も、自分が痛い目に遭えば他人は幸せになる。勉強になった。「障害学習」とはこのことだ。 滝がひそかなブームである。根が素直だからすぐそれに乗る。乗るけれど、尻馬には乗りたくない。週刊誌やガイド本には絶対に載らないような所へ行きたい。年配登山者おなじみの、いんぎん無礼な魂胆だ。 飛騨一帯の滝を知り尽くした著名な写真家、和合正さん(67)の案内で往路5時間。標高1950メートルに「貴婦人の裸身」のような美滝(幅15メートル、落差100メートル)を発見した。想定外の冒険第2幕が待っていたのはその帰路だった。 ☆篤姫が見たくて岩のすき間からごうごうという不気味な音がするが、滝そのものは地下に隠れて目には見えない。そういう不思議な滝を和合さんに案内されながら、やがて残りはあと2キロ弱。日暮れが近いがここまでくればひと安心という時だった。 高さ約3メートル、兵衛谷本流のがけっぷちである。大岩の横を擦り抜けようとした時に、突然それがぐらりと動いて、落下し始めた。うわっ。寄り切られて土俵下に転落する力士よろしく、おやじも岸に落ちていく。このままではせんべいだ。 本能的に横に跳んだが、かわしきれない。1度どすんと落ちてから、直径2メートルほどの岩があいさつもなしにこっちへ転がってくる。なすすべもなく、左足がゆっくりとひかれていくのをじっと見守る情けなさ。 和合さんが飛んできて「どえらいこっちゃ、大丈夫か」「大丈夫じゃないです」。脂汗が吹き出して、10分間ほど心がどこかに蒸発していた。消防を呼ぶかと聞かれて、我に返った。 「はってでも下ります」。非常装備は十分だが野宿は嫌いだ。早く帰って篤姫を見たい、孫と遊びたい。そもそも片足骨折ぐらいで「自力で帰還」できない者は、山に入る資格がない。うめきながら下りた。 ☆オートマで帰京まともには歩けないが、もともと深い樹林帯と荒れた沢。ほふく前進に違和感はない。和合さんもよく心得て、冷淡なほど振り返らない。いちいち優しくされたら心がくじけて、痛みが倍増したに違いない。帰れなかったに違いない。 2時間半で駐車場に着いた。和合さんの肩を抱いて感謝した。オートマをいいことにそのまま車で帰京、翌々日の仕事をすませてから病院に行った。患部はボールのように腫れていた。 ☆名医のリハビリ |
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