08年センバツ密着レポート

見ごたえがあった大塚椋司の内角ストレート


小関順二さん

小関順二さん (9)

2008/04/02 09:25

 4月1日に行われた準々決勝は勝利チームの2投手が対照的なピッチングを見せ、興味深かった。平安高対聖望学園の試合では、聖望のエース・大塚椋司(右右・178/76)が完璧なピッチングを見せた。5回までに奪った三振は10個で、許したヒットはゼロ。ひょっとしたら完全試合が見られるのではないかと、少し胸がどきどきしたほどだ。前半10個の奪三振のうちストレートの見逃しが5個。これだけ見ればストレートがよかったと思いがちだが、本当によかったのは変化球のほう。縦と横にキレまくるスライダーと、野茂英雄(元ロイヤルズなど)が乗り移ったようなフォークボールが素晴らしく、平安の各打者はこの球を恐れるあまり、130キロ台のストレートに手が出なかった。
 ストレートもよかった。とくに内角をえぐるコントロールが素晴らしく、これが打者の踏み込みを許さず、結果的に変化球をさらに生かすという好循環を促した。まさに直・曲球の相乗効果である。2日目のレポートでは「左肩の早い開きがなくなればさらにピッチングはよくなる」と書いた。その通りなのだが、この日の大塚は左肩の早い開きがあっても、右打者の内角に腕を振って渾身のストレートを投げることができた。なぜだろう。それは早いリリースのためだと思われる。
 早いリリースはマイナス要素には違いないが、「ボールを潰す」タイプの投手には絶対条件である。考えてみてほしい。体の前でボールを放す投手に、ボールを潰すことは不可能である。大塚のストレートは130キロ台が多かったにもかかわらず、低めに威力があった。これは、ボールを潰す早いリリースがあったから可能だった。
 また、早いリリースは「ボールを潰す」ことを前提にすれば、左右のコントロールを一定させるのに効果的である。普通の投手はリリースポイントを少しずつ変えて左右のコントロールを調整するが、大塚はリリースポイントが横から見て肩口あたりで一定しているので、左右のコントロールを一定させやすい。これが腕を振って体の前でボールを放すタイプだとそうはいかない。指先の感覚が悪い日などはコントロールが不安定になるはずである。たとえば、斎藤圭祐(右右・184/84)がそうだ。
 斎藤のリリースポイントは「体が開く」と言われる悪癖があっても、スクエア(正常)である。つまり、右打者の内角を狙うときは少し早めにリリースし、外角を狙うときはボールを長く持つという「リリースの感覚」を要求される。こういう感覚は、「左肩の開きが遅い」投手には無縁である。体の向きさえ間違っていなければ、体の開きがないので、左右のコントロールを間違うわけがない。しかし、斎藤のようなタイプは、指先の感覚を研ぎ澄まさなければ、左右のコントロールが一定しない。長野日大高戦で7回に崩れたのは、大量点リード(7対1)で集中力が切れたことによって、指先の感覚もなくなったためだろう。こういう感覚を常に保たなければいけない斎藤は、大塚にくらべてピッチングを難しくしていると言っていいだろう。

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