2008/05/20 20:17
奥田稔彦(50歳・広島・49期・S級2班)【完全燃焼へ向けて】 今年の1月にまたS級に戻ってきた。人なつっこい笑顔は変わらない。そして「いつまでも元気ですね」と声を掛けたが、少し寂しげな表情で「こんな年でS級にいていいんですかね」という意外な返事が返ってきた。「立派なことじゃないですか」と答えたものの、複雑な心境だった。 その後、別の開催で会ったときに、その話をすれば「あれは照れで言ったんですよ」と笑った。おそらく奥田は歯がゆいのかも知れない。かつては「マーク職人」として名を馳せていた。そして「今日は誰が競ってくるんだろう、誰と競りになるかなと思うのが楽しみだった」というセリフを覚えている。 だが50の声を聞けば足は間違いなく衰えている。今までのイメージで競走ができていない。それでも気持ちだけは切らさないでいる。奥田にとって「切らす」ことが恐怖なのだ。「今になって無理してやるのはつらい。だけど良くなるという希望がないのもつらい」。ベテランゆえの苦悩が見え隠れする。「自分は駄馬だから」と認めるがゆえに日々の努力は怠りない。練習はもちろん、1年にフレームを4台は替えて試行錯誤を繰り返しているのだ。「回り道をしても自分の納得のいくものを見つけないと満足感は得られないんですよ」。常に上昇志向をもって日々の選手生活を送っている。 ある日、兄の言葉に助けられたことがある。高所恐怖症の兄に「その場所にいかなくてはならないと思えばプレッシャーができる。だめでもいけるとこまでいけばいいと思えば楽になる」と言われた。「考えれば緊張するだけ。その場で対処すればいい」という結論に達した。そして「弱点ばかり考えていると良くない。レースも人生も思うようにならないことが多いから」。まだやり残したことがあるから奥田はハンドルを握り続ける。「辞める理由付けはいくらでもつけられる。でもここは自分を表現出来る世界。これからもレースで自己表現していきたい」。奥田の完全燃焼への道はまだ遠い。
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