FRAGILEの日記

スポーツのTV中継不要論 /スポーツ


2008/02/19 16:45

プロ野球のテレビ中継の視聴率低下と放送回数の減少は、もうニュースにならないほど見慣れた記事になってしまった。
それに憤る意見も少なくないが、いっそのこと野球だけでなくスポーツ全般で全国ネットの地上波TV中継は辞めても良いのではないだろうか。

全国ネットの地上波TV中継がファンも含めたスポーツ関係者にとって魅力的なのは、買ってきたテレビに何の追加(費用や機械)もなしで無料で視聴できることだ。
それ故に、どんなに貧しい人にでもスポーツの楽しみを伝えるTV中継の意義を主張する意見も少なくない。

ただ、実際には民放の地上波TV放送は無料で視聴できているわけではない。
放送に関わる経費はスポンサーの広告料という費用で賄われており、それは視聴者の購入している商品の中に含まれている。
その額は年に2兆円、国民一人当たり2万円程度の負担をしていることになる。

逆に言えば、放送を無料にしている以上、経費を負担してくれるスポンサーがいないと番組は成り立たない。
そのために放送局は視聴率という指標で、より多くの人が見ている番組を企画制作し、スポンサーを得ることになる。
企業の側からすると、より多くの人が見ている(はずの)番組のスポンサーになることで、自社の商品やサービスを多くの人にアピ-ルすることができた。
これまでは。

しかし、企業にとって、決して安くはないTVの放送料を無条件に負担できる余裕はなくなっている。
広告料も効率的に使うことが求められ、自社の商品やサービスを利用する人にアピールできているかを考えるようになった。
果たして、その番組を観ている視聴者は自社の商品やサービスを利用してくれる人なのだろうか、と。

そもそもTVの前の視聴者がどんな人かを量るすべはない、ことになっている。
インターネットのように関心の有無や行動追跡が把握できる広告媒体や、チラシのように近所の人たちだけを集めたい地域の広告媒体より費用対効果が分かりにくいという欠点がテレビにはある。
そのため、効率的に広告を行いたいと考える企業は徐々にテレビから離れ始めている。

いまTVスポンサーの中心となっているのは、TVの視聴時間が長く、購買力があり、情報に敏感(とされている)若い女性をターゲットにした企業だ。
よって、放送局もスポンサーを獲得するためには、企画するTV番組の内容もそうした若い女性向けにならざるを得ない。
若い女性向きのドラマやバラエティよりもプロ野球中継の視聴率が低いのだから、放送局も収入のためにはプロ野球中継を減らす選択をする。
また、仮にプロ野球の視聴率が上向いたとしても、若い女性たちが見るようにならなければ、結局スポンサーはつかず、放送回数が増えることはない。
増えたとしても、中継の中で本当に若い女性に向けた番組の宣伝をたくさん盛り込んで、その出演者をゲストに呼ぶくらいのものだ。

そこで放送局はスポーツ番組自体もスポンサー獲得のために、若い女性に向けた演出を行う。
見栄えのするアスリートを出演させ、分かりやすく感動的なストーリーを競技の前に繰り返し、約束された結果でクライマックスを迎える(かもしれない)。
そうした演出の中ではスポーツの実況中継も正しく育つわけもなく、稚拙で煽るばかりのコメントが繰り返される。
その行き着く先のひとつが亀田兄弟だったのではないか。
スポーツファンにとってはブーイングでも、若い女性のファンが多く見られたことは、放送局としては成功と見ていたことは容易に推察される。

こうした傾向が変わらない限り、全国ネットの地上波TV中継をすることで、演出が競技の中にまで影響が及ぶことは、決してスポーツにとって良いことだとは思えない。
見栄えのするアスリートが実力以上に評価されたり、すでにピークを過ぎた人気選手がいつまでも主要な大会に選ばれ続けることは、実力の正当な評価や若手の台頭を阻害する意味でスポーツ競技の活性化や強化に悪影響を及ぼすとも言える。

では、全国ネットの地上波TVから消えたスポーツ中継はどこへ行けばよいのか。
それはインターネットを含めた有料放送と地方局だろう。
プロ野球でもパ・リーグはすでにインターネット放送の放映権をソフトバンク子会社と契約しているし、地元の各地方局での視聴率は好調という。
すでに認知度が高く地域密着を目指すスポーツは地方局を、マイナースポーツは生観戦をベースとしながらインターネットや衛星放送で遠隔地のファンにもリーチを拡げていくという使い分けもできるだろう。
全国ネットに比べれば非常に多いチャンネルが用意されているのだから、どんな競技団体でも中継をすること自体は可能だろうし、コンテンツとして価値を高めていくことができれば収益につながっていくだろうし、それが競技の普及と強化にもつながっていく。

こうしたアイディアは、スポーツファンに取って、視聴環境も費用の面でも全国ネットの地上波TVに比べれば敷居は高くなったと言えるかもしれない。
しかし、いまやスポーツファンのためのものではなくなったスポーツ中継を、スポーツファンの手に取り戻すには、それだけの費用を目に見える形で払わざるを得ないとも言える。
また、そうした費用がより直接的に競技者に還元されるのであれば、スポーツファンとしては望むべきことなのではないだろうか。

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